最新記事

環境問題

中国政府、ディーゼルトラック利用半減令 「鉄道アルマゲドン」起きるか

2017年9月27日(水)16時21分

9月22日 深刻化する大気汚染の改善に向けて、中国政府がディーゼルトラックによる輸送を制限する方針を打ち出したことで、鉄鋼から化学製品などさまざまな中小工場が、停滞しがちな鉄道輸送へのアクセスを確保するための大争奪戦を繰り広げている。写真は2013年6月、安徽省淮北市で撮影(2017年 ロイター)

深刻化する大気汚染の改善に向けて、中国政府がディーゼルトラックによる輸送を制限する方針を打ち出したことで、鉄鋼から化学製品などさまざまな中小工場が、停滞しがちな鉄道輸送へのアクセスを確保するための大争奪戦を繰り広げている。

中国の環境保護省は8月、28都市を拠点とする数万の企業に対し、大気汚染が悪化する冬季期間中のディーゼルトラック利用について、11月1日までに半減させるよう命じた。

同省はまた、鄭州新力電力や邢台鋼鉄など20以上の電力や鉄鋼会社に対して、より厳格な恒久的目標を省令で示し、輸送の半分以上を鉄道に振り替えるよう指示した。

中国の重工業、特に鉄道網から遠く離れれていたり、地域間を短距離輸送させる内陸部の企業にとって、トラックはより安価で望ましい輸送手段だ。

一部の地域ではトラック輸送に対して過去にない厳しい締め付けを始めている。河北省と河南省中部では、一部の鉄鋼会社は常時、最大9割の製品を鉄道輸送しなくてはならない。現在、その割合は5─6割に過ぎない。

今回の動きは、各世帯が暖房を使用する11月から3月にかけて、中国北部を覆う大気汚染を緩和しようと、政府が長年取り組んでいる対策の新たな一手だ。家庭暖房向けの電力は、二酸化炭素排出や大気汚染を伴う石炭火力発電が主流となっている。

政府はこのほか、大気汚染を抑えようと、冬季は最大50%生産能力を絞るよう北部の製鋼工場や他の工場に要請している。

トラック輸送の制限に先立ち、主要港湾都市内におけるディーゼルトラックによる石炭輸送を禁止する政令が今年出された。

中国全土に張り巡らされた世界最大級となる約12万キロの鉄道網は、国内企業と海外市場を結び付けて、一大貿易圏を築こうとする中国政府の「一帯一路」構想の基軸となるものだ。

この輸送改革のスケールは計り知れない。高速道路を利用した輸送は、約430億トンを超える昨年の輸送物資の77%を占めていたが、鉄道輸送は8%しかなかった。

「これは、環境影響をいかに(政府が)真剣に考えているかを示す証左の1つだ。ただ、荒っぽいやり方だし、鉄道輸送が合理的でない路線もある」と、コンサルティング会社アルカディスでアジアの輸送ロジスティクスを担当するジョナサン・ベアード氏は言う。

中国鉄道省は、取材の要請に応じなかった。環境省と鉄道輸送価格を監視する担当部署は、コメントしなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中