最新記事

動物

フィンランドで隠し撮りされた「怪物」の悲劇

2017年9月22日(金)18時00分
クリスティン・ヒューゴ

毛皮モンスターの正体は? Image courtesy of Oikeutta eläimille.

<人間の手によって醜く変形させられ、苦しい生の末に殺される動物たち>

フィンランドの動物愛護団体「動物の権利」は、毛皮を採るため異常に太らされた動物の証拠映像を入手した。匿名の活動家たちが夜、5つの毛皮農場に忍び込んで撮影したものだ。

この奇態な毛のかたまりはなんと、異常なまでに太らされたキツネ。だぶついた毛皮は幾重にも波打ち、自分の重さで動くこともままならない。折りたたまれた毛皮は感染症にもかかりやすい。動物に苦痛を与えるのは違法と定めているフィンランドでこんな動物虐待が行われていたことに、関係者は大きな衝撃を受けている。

【参考記事】猫は個体であると同時に液体でもあり得るのか!? 

毛皮生産者の団体「ファー・ヨーロッパ」は直ちに声明を出して反論した。「フィンランドの動物の福祉に関するルールは、ヨーロッパでも最も厳しい」と、CEOのマッテ・ニールセンは言う。キツネを肥大化させることなど許されるはずもなく、違法業者が少しでも早く摘発されるよう、協力するという。

monsterfox02.jpg
白ホッキョクギツネ   Image courtesy of Oikeutta eläimille.

毛皮農場は、ミンクやキツネなどを繁殖し、育て、毛皮を採るために殺す。キツネなら1歳未満で殺すのが普通だ。

多くの動物愛護団体は、毛皮産業は存在自体が倫理にもとると考える。「一生こんな小さい檻に閉じ込めること自体が間違いだ」と、「動物の権利」のクリスト・ムウリマアは言う。
一方、毛皮生産の禁止より、繁殖や飼育の方法をできるだけ快適にしようとする団体もある。と殺の直前まで、飢えも苦痛もストレスもないよい「人生」を送ってもらうようにするのが虐待をなくす近道だという。

【参考記事】ペットショップは「新品」の犬を売ってはいけない

monsterfox03.jpg
アカギツネ   Image courtesy of Oikeutta eläimille.

毛皮反対派でも賛成派でも、本来の姿と似ても似つかないモンスターと化したキツネを見て非難しない人はいない。ファー・ヨーロッパのニールセンは言う。「私は多くの農場を訪ねるが、そこで見かける動物たちはみな健康そのものだ」

モンスターキツネの発見は、これ一度きりであってもらいたい。

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国副首相が米財務長官と会談、対中関税に懸念 対話

ビジネス

アングル:債券市場に安心感、QT減速観測と財務長官

ビジネス

米中古住宅販売、1月は4.9%減の408万戸 4カ

ワールド

米・ウクライナ、鉱物協定巡り協議継続か 米高官は署
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中