猫は固体であると同時に液体でもあり得るのか!? 

2017年9月22日(金)16時15分
松丸さとみ

iStock-Okssi68

<パリ第7大学のマーク・アントワン・ファルダン氏が、流体動力学を使って、「猫は固体であると同時に液体でもあり得るのか」という疑問に取り組んだ>

「猫は固体かつ液体か」

ノーベル賞のパロディとも言える「イグノーベル賞」がこのほど発表された。イグノーベル賞とは、「まず人をクスッと笑わせ、その後考えさせる」研究に賞を与えるものだ。

科学、医薬、技術の分野で毎年10の賞を授与している。今年は、「平和賞」、「経済賞」、「解剖学賞」、「栄養学賞」などが発表された(10のカテゴリーはその年によって異なる模様)。それぞれ個性的かつ笑える研究で興味を引くのだが、中でも気になるのは、「物理学賞」だ。「パリ第7大学」として知られるパリ・ディドロ大学のマーク・アントワン・ファルダン氏が、流体動力学を使って、「猫は固体であると同時に液体でもあり得るのか」という疑問に取り組んだ。

今回の受賞は、2014年7月に流動学協会の会報に発表された「猫の流動学について」という論文がもとになっている。

きっかけは「boredpanda」の猫記事

論文の本文には、「猫の流動学について」を考察することにした動機が記されている。それは、「boredpanda.comに『猫は液体である』というメタ研究が掲載されたが、これが主張するところの猫が液体だというのは定かなのか、現代流動学のツールを用いて実際に確認したい」というものだ。

ここに出てくるboredpanda.comとは、一風変わったニュースを軽いノリと美しい写真で発信するサイトだ。リンクが貼っていないので定かではないが、ここで「メタ研究」と表現されている『猫は液体である』という記事は、恐らく4年前に掲載された「猫が液体である15の証拠」だと思われる。猫がワイングラスやボウル、箱などにぴったりと収まった様子の写真が満載の、クスッと笑ってしまうようなこの記事を、至って真面目に証明しようと試みたのが、今回イグノーベル賞を受賞した「猫の流動学について」というわけだ。

ファルダン氏は論文の中で、「固体とは、一定の体積と形を保つもの。液体とは、体積は一定であるものの形は容器に合わせて変化するもの。気体とは、そこにある体積を満すべく広がるもの」という一般的な定義に基づき、猫が液体か否かの解明に取り組みたい、と述べている。

日本の猫カフェも研究の参考に?

フランスのニュースを英語で伝えるサイト「ザ・ローカル(フランス版)拠」によると、ファルダン氏は授賞式で、「液体は、それが入っている容器に合わせて形が変わるもの」と言い、猫は狭い花瓶やグラスに無理やり入り込んだり、箱やバケツの形に合わせて広がったりできるため、「液体の特性も持っていると見ることができる」と考察の結果を説明した。

またファルダン氏は、イグノーベル賞を受賞する意思の有無を確認された際に、「ノーベル賞を辞退するのはカッコいいかもしれないが、イグノーベル賞を辞退するのは間違いなくカッコ悪い」と、受賞の動機を話したと同記事は伝えている。

今回の論文の中には、猫の流動特性を示す写真がふんだんに使われているが、どれも間抜けな猫の姿を捉えた写真に、「猫と水面の不親和性」や「垂直壁における猫の粘着性」など、大真面目なキャプションが付けられている。

なお論文は、「日本で最近行われた実験では、猫は孤立した液体系ではなく、その環境からストレスを転移させ、吸収できるものとして捉えるべきということが示唆された。実際に日本には、ストレスを受けた顧客が猫をもふもふして喉のゴロゴロを聞き心配事を忘れられる猫カフェというものがあるくらいだ」と締めくくっている。

●「猫は液体か否か」──検証するための写真と動画 😺

5264444025_f8bfc632c6_b.jpg

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 5
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中