最新記事

ミャンマー

ロヒンギャ武装勢力、活発化で穏健派殺害も ミャンマー人道問題の闇

2017年9月14日(木)10時00分

民族対立の深まるラカイン州の危機は、ミャンマーの指導者アウン・サン・スー・チー氏が抱える最大の試練と化している。この問題におけるスー・チー氏の対応は、民主化の旗手として彼女をこれまで支持してきた西側諸国の人々を幻滅させている。

国連のグテレス事務総長は5日、ミャンマー当局に対し、ロヒンギャのムスリムに対する暴力を止めるよう要請し、民族浄化や人道的危機、そして地域の不安定化を引き起こす可能性があると警告した。

数世代にわたってアパルトヘイト(人種隔離政策)に近い条件の下で暮らしているムスリム少数民族の不満に、スー・チー氏が対応できなかったことによって、彼らの間で武装勢力に対する支持が高まっている、とロヒンギャの指導者や複数の政策アナリストは指摘する。

本格的な反撃

まだ駆け出しのロヒンギャ武装勢力は、何十もの村々にまたがる下部組織で構成されるネットワークへと変身し、幅広い攻勢を仕掛ける能力を有するまでに至っている。

ミャンマー政府はARSAをテロ組織と認定。また、ARSAが当局への内通を防ぐためにムスリムの民間人を殺害しており、ロヒンギャの複数の村々を焼き払ったと非難しているが、同グループはこうした疑惑を否定している。

同組織による最新の襲撃は、政府側からの本格的な反撃を招き、ミャンマー軍によれば、反体制派の約400人が殺害され、治安部隊側にも13人の死者が出たという。

ロヒンギャの村民と人権団体関係者は、軍が無差別に村落を攻撃し、家屋に火を放っていると主張する。一方、ミャンマー政府側は、合法的な対テロ作戦を実施しており、部隊には民間人を傷つけないよう命令が出ているとしている。

先月25日以降、数十万人のロヒンギャが隣国バングラデシュに逃れており、人道上の危機発生に対する懸念が高まっている。ムスリム以外の村民約2万6750人も、ミャンマー国内の別地域に移動させられている。

スー・チー氏は、アナン氏が率いる国連諮問委員会による、ロヒンギャの統合推進を求める勧告を受け入れると発言。その一方で、同氏は以前、ミャンマーの民族的な複雑さを理解するよう訴えていた。

スー・チー氏は6日発表した声明で、「テロリスト」がラカイン州における紛争について「膨大な虚偽情報」を流していると批判。だが、国外に逃れたロヒンギャについては何の言及もなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送NY外為市場=ドル上昇、米中緊張緩和への期待で

ビジネス

トランプ氏、自動車メーカーを一部関税から免除の計画

ビジネス

米国株式市場=続伸、ダウ419ドル高 米中貿易戦争

ビジネス

米経済活動は横ばい、関税巡り不確実性広がる=地区連
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    ウクライナ停戦交渉で欧州諸国が「譲れぬ一線」をア…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 7
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中