ミャンマー軍のロヒンギャ弾圧に何もしない米トランプ政権
米国務省のパトリック・マーフィー次官補代理(東南アジア担当)は9月8日、ミャンマー情勢に関して記者団に説明を行った時、トランプ政権が対ミャンマー政策で最優先に掲げるのは民主化だと語った。そのうえで目下の焦点は、迫害の舞台となっている南西部のラカイン州北部で、ミャンマー政府が人権団体やメディア関係者の受け入れを再開するよう圧力をかけることだと言った。
1962~2011年まで軍政が続いたミャンマーは、つい最近まで国際社会で最も孤立した国の1つだった。2010年に不完全ながら政治の自由化に舵を切ったのをきっかけに、バラク・オバマ前政権の高官がミャンマーを訪問するようになった。2011年にはヒラリー・クリントン元米国務長官が親善大使として同国を訪問したのを機に、ミャンマー投資の規制緩和を発表。2016年には「ミャンマーの民主化が実質的に進展した」として、経済制裁を全面的に解除した。
だがミャンマー政府によるロヒンギャの弾圧は、民主化を挫折させかねない。シンクタンク国際危機グループ(ICG)は8日の声明で、ロヒンギャに対する全面的な弾圧で生まれた人道危機は、これまでミャンマーが成し遂げた民主化の過程を台無しにすると警告した。
ロヒンギャを片端から標的にすれば、ロヒンギャが集まる地域が政治的に不安定化し、武装勢力による暴力行為を正当化するだけだと、ICGは指摘する。「ミャンマーで暮らす人々や、同国の民主化や地域の安定化に対して、重大なリスクを及ぼすことになる」
米政府には圧力をかける力がある
米政府はもっとミャンマー政府に圧力を及ぼせるはずだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチのロバートソンは言う。この5年間、ミャンマーを物資両面で支援してきた米政府は、ミャンマー政府の指導者層、特に軍人や事実上の最高指導者で「民主化指導者」のアウン・サン・スー・チーに対して、ある程度の貸しがある。民族浄化を止めよ、さもなければ「軍事的にも、外交的にも、経済的にも途方もない代償を支払うことになる」と詰め寄るべきだと、ロバートソンは言う。暴力が止み、国際社会の視察団が調査を始められるまで、米国防省がミャンマー軍との軍事協力を停止することもあり得るという。
【参考記事】スーチーが「民族浄化」を批判できない理由
一方、バングラデシュとの国境を越えて避難したロヒンギャ難民は、難民キャンプにあふれかえり、難民の流入がいつまで続くか終わりが見えない。
「さらに多数の難民が押し寄せてくると覚悟しなければならない。不安だ」とUNHCRでバングラデシュを担当するシンニ・クボは言った。「巨額の財政支援が必要だ。前例がなく、まるでドラマだ。今後何週間もずっと続くだろう」
(翻訳:河原里香)
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