4選狙う独メルケル首相 難民巡る「どん底」からの復活劇
汚れ仕事
メルケル首相の人気復活の背景にある重要な要因の1つに、ドイツに入国する難民申請者の減少がある。2016年には約28万人となり、今年はさらに減少する可能性がある。
これは首相の功績だ。トルコを経由して欧州に流入する移民数を削減するという、トルコとEUの合意を仲介したからだ。
だが、難民減少に本当に効果があったのは、首相が反対していたバルカン諸国の国境閉鎖だった、と指摘する批判派もいる。
これをユーロ圏の金融危機におけるメルケル首相の対応と重ね合わせる見方もある。当時、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、通貨制度を維持するために「何でもやる」と断言した。だからこそメルケル首相は、結果を恐れることなく、ギリシャなどのユーロ圏諸国に対して厳しい態度を貫けたのだ。
難民危機においては、マケドニアやトルコ、ハンガリーなど、難民の移動経路を封鎖した国々が、メルケル首相に代わって「汚れ仕事」を引き受けてくれた。そのおかげで、首相は戦火を逃れた人々を助けた「心優しきリーダー」というイメージを維持できたのだ。
このアプローチによってメルケル首相は、自身の影響力を、従来の支持層である中道派よりも、左に広げることができた。右派の支持者の一部はAfDに流れた可能性があるが、世論調査からすると、従来は左派寄りだった都市部の若年層がその穴を埋めているようだ。
ドイツ経済は十分に好調で、社会に大きな亀裂を生むことなく難民の流入を吸収することができる。難民危機の発生時には、大方の事前想定とは異なり、ナチスという過去に対する反省もあり、ドイツはオープンで寛容な国として名乗りをあげた。
今月発表された調査では、ドイツ国民にとっての懸念事項の首位となったのはテロだった。だがビルト紙が行った別の調査によれば、移民抑制は優先課題とは考えられていない。
「ドイツ国民は驚くほどグローバル、かつリベラルで、世界に対してオープンだ」とインファス応用社会科学研究所のメンノ・スミッド所長は語る。同研究所が先月発表した調査では、ドイツにおいて難民が広く受け入れられていることを示していた。
「われわれはグローバリゼーションの勝者だ。トランプ政権誕生に至ったような経済的要因は、この国にはまったく存在しない」と同所長は述べた。
(翻訳:エァクレーレン)
[ベルリン 10日 ロイター]
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