【調査報道】日本外交、3000億ドルのシリア復興特需に屈す
会場前には参加45カ国の国旗が掲揚された。ロシア、イラン、北朝鮮、中国など親シリアの国に交じって、日章旗もはためく。「国旗を見て日本の展示ブースを探してきてくれた人がたくさんいた」と、大阪の商社に勤める日本人男性(37)は語る。
この商社マンはイラク戦争後の復興期、シリア西部のラタキア港からイラク北部のモスルやアルビルに建設機械を中継貿易するなど、中東ビジネスに豊富な経験と人脈を持つ。シリア政府が見本市開催を決めたのは4月末。国外退去となった大使の代理を務めるワリフ・ハラビ臨時大使から出展の要請があったのは5月だった。
不安定な治安と復興をにらんで彼が出展したのは、セキュリティーシステムや炎天下での熱中症を防ぐ建設作業服などだ。そのほか大型インフラ関連の出展も狙ったが、準備期間が短く断念。結局現地では、広大なブースと何十人もの使節団を擁し、既に太陽光パネルを現地生産。安価な製品を大量に展開する中国に圧倒された。
だが小さな日本ブースにもシリア国営放送など現地メディアが押し寄せたという。毎日100社を超える企業からの問い合わせは、中国が満たせない高品質な製品への期待の表れだ。今後もシリア政府はインフラ見本市を予定している。太陽光発電や水力発電、水道などを中心に日本の技術力をアピールしていきたい──そう考える商社の営業資料には「『火中の栗』に、ビジネスチャンスを見出す!」の文字が躍っていた。
復興をにらむ永田町
3000億ドルの復興特需と日本に対する現地の期待の前に、制裁などでシリア渡航や金融決済もままならない政治と外交の壁が立ちはだかる。だが今年6月末に「日本・シリア友好議員連盟」が発足するなど、政治にも変化が見え始めている。
※「対中国の『切り札』 インドの虚像」特集号掲載の記事では、議連会長を務める議員、裏舞台で議連結成に一役買ったコンサルタント、駐日シリア臨時大使の壮行会を主宰した飯島勲内閣参与などにも取材し、詳しく報じています。
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