習近平、苦々しい思い:米韓合同軍事演習
番組では、どんなに参加人数を軽減するなどしても、開戦まであともう一歩といった臨戦態勢を取り、米軍のハリス太平洋司令部司令官、ハイテン戦略司令部司令官、グリーブス弾道ミサイル防御局局長およびブルックス在韓米軍司令官兼米韓連合司令官の4大巨頭を「実戦場」に集結させるという前代未聞のデモンストレーションをやるに至っては、これまでで最大規模だということさえできると、解説者は怒りを隠さない。
特に米空軍のU-2偵察機を非難
日本ではこのたびの米韓合同軍事演習でU-2偵察機が使われたことを報道した情報は(筆者の知る限り)あまり見たことがなく、唯一産経新聞が、ロイターの写真キャプションで報道しているくらいだ。そこには明確に「21日、韓国・ソウル近郊の平沢にある米軍基地上空を飛ぶ米空軍の偵察機U-2(ロイター)」と書いてある。
ところが中国では、ほとんどがこのU-2偵察機(スパイ機)に話題が集中しているくらい、盛んに報道されている。たとえば、「U-2偵察機、朝鮮半島上空に出現。米軍は開戦の準備をしているのか?」など、数多く見られる。
この偵察機は、韓国に配備されているTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)に付属しているXバンド・レーダーより遥かに高い「偵察能力」を有しており、中国大陸における軍事配備をも偵察できる。そのため中国は何よりもU-2偵察機の使用を非難しているのである。
結果、習近平は米韓合同軍事演習を奨励した日米「2+2」外交防衛会議を苦々しく思い、特に日本の関与を実に不快に思っているので、日本への何らかのいやがらせ的軍事行動があるかもしれない。日中国交正常化45周年記念行事も一応行うのは行うが、快く思っているわけではないことを、頭に入れておきたい。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。