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「雨傘」を吹き飛ばした中国共産党の計算高さ

2017年8月25日(金)15時30分
高口康太(ジャーナリスト)

本土の「やり口」を応用

こうした状況を当の元学生リーダーたちはよく理解していた。昨年夏、筆者に対して周は「雨傘運動のような大規模な抗議運動は今後10年から15年は起きないだろう」と断言していた。あれほどの政治的エネルギーは簡単に蓄積されないという分析だ。

そして周は大上段に構えた政治運動ではなく、日常的な社会問題から香港市民の政治意識を高めたいとも話していた。彼が具体的に始めていたのは、住宅問題などを考える市民講座の講師としての活動だった。

黄、羅の2人は16年4月に政党「デモシスト」を設立し立候補を目指していたものの、やはりすぐに雨傘運動を再現することは困難だと判断。一国二制度が終結する47年まで持久戦に挑むとの方針を発表していた。短期的な運動ではなく、長期的に香港市民の政治意識を高める戦略だが、共産党は香港社会に生まれた政治運動への関心低下という「隙」を見逃さなかった。

【参考記事】劉暁波の苦難は自業自得? 反体制派が冷笑を浴びる国

民衆運動は熱しやすく冷めやすい。人々の関心が高まっている間はなだめすかし、いったん低くなると徹底的な取り締まりに転じる――。「秋後算帳(時を待って報復する)」と呼ばれる共産党の常套手段だ。中国本土で住民運動対策として常用されているやり口が、香港でも使われたわけだ。

これまで香港の秩序は、政府の権力と市民社会の抵抗のバランスで成り立っていた。抵抗力が弱まれば権力の暴走が始まる。野党勢力の弱体化が著しいどこかの国にとっても、教訓となる話かもしれない。

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[2017年8月29日号掲載]

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