最新記事

動物学

ウォンバットのうんちはなぜ四角いのか

2017年7月24日(月)16時30分
ルイーズ・ジェントル(ノッティンガム・トレント大学准教授、専門は行動生態学)

草を食べるウォンバット bennymarty-iStock.

<オーストラリアに生息するウォンバットが四角いうんちをするのには、賢い理由があった>

動物のうんちの大きさは多種多様だ。小さな無脊椎動物のうんちは顕微鏡を使わないと見えないほど小さいし、逆に最大級のアフリカ象では1日当たり50キロを超える。形も様々で、犬は細長い筒型、うさぎは丸薬のようなペレット型、牛はベチャっと平たいスプラット型だ。なかでもユニークなのがウォンバット。うんちが四角いのだ。それを一晩に80~100個もする。

ウォンバットは大きく分類するとコアラの親戚で、オーストラリアに生息する。群れで行動せず夜行性で、日中は地中の穴の中にいる。1日の平均睡眠時間は16時間とよく眠る。夜になると、餌となる草や植物を探しに地上に出る。夜行性で視力がとても弱いため、餌探しは嗅覚が頼りだ。

(ウォンバットの四角いうんち)


生きとし生けるものはみなうんちをする。そしてその動物と餌に関する情報を提供してくれる。質感やサイズ、形状、臭いの違いから、落とし主の正体を特定できる。またうんちのきつい悪臭は、動物が他の動物に自分の存在と縄張りを知らせるのにも使える。不用意に他の動物と出くわして致命的な争いになるのを避けるためだ。

【参考記事】垂れ耳猫のスコフォがこの世から消える!? 動物愛護団体から残酷との声

うんちは賢い

ではウォンバットの場合はどうか。ウォンバットは縄張り意識が強い動物で、争いを避けるために四角いうんちで自分の縄張りに印をつける。他の動物の様々なうんちの違いを見分け、天敵やオスのウォンバットのものを見つけたら回避行動を取ることも分かっている。オスがメスの繁殖期を突き止めるなど、うんちでホルモンの状態も把握できる。

ウォンバットは自分が掘った穴の外や丸木の上や岩の上など、他のウォンバットが見つけやすい場所にうんちをする。四角いので、不安定な場所でも転がる心配がない。

ウォンバットのうんちが四角くなるのは、肛門が四角いからではない(実際、ウォンバットの肛門は丸い)。消化が遅く14~18日の日数を要するため、消化後は極度に圧縮されて四角くなるとみられている。ウォンバットの消化管は非常に長く、ほとんどの栄養分や水分を餌から吸収する。

【参考記事】食べつくされる「自撮りザル」、肉に飢えた地元民の標的に

まとめるとこうだ。ウォンバットは夜行性で視力は悪いが優れた嗅覚を持ち、うんちを主な手掛かりにして誰がどこに住み、縄張りによそ者がいないかどうかを見分ける。ウォンバットのうんちが四角いのは、食性や消化の遅さが現因だ。岩や丸木の上に置いても転がらないので完璧な形状だ。

まったく、賢いうんちもあるものだ。

(翻訳:河原里香)


Louise Gentle, Senior Lecturer in Behavioural Ecology, Nottingham Trent University

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.



(人懐こいウォンバット)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪3月住宅価格は過去最高、4年ぶり利下げ受け=コア

ビジネス

アーム設計のデータセンター用CPU、年末にシェア5

ビジネス

米ブラックロックCEO、保護主義台頭に警鐘 「二極

ワールド

ガザの砂地から救助隊15人の遺体回収、国連がイスラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中