搭乗手続きは「顔パス」で 監視社会が本格化?
米政府は出入国管理を強化する一環として空港への顔認証システム導入を着々と進めている ZAPP2PHOTO/SHUTTERSTOCK
<乗客の顔写真を米政府が収集。罪のない市民がテロリスト扱いさせる恐れも>
空の旅には既に警察国家を思わせる部分がある。金属探知機、爆発物探知犬、ボディーチェック、手袋をした米運輸保安局(TSA)職員による歯磨き粉チェック――しかも状況はさらに悪化するかもしれない。空港でのチェックインに顔認証まで加わるとしたら?
数十年も前に、米議会は連邦当局が外国籍の人間の出入国を管理することを義務付けた。政府が外国人の出入国を記録すれば、ビザが切れた後も不法滞在していたかどうかが簡単に分かるというわけだ。
しかし国土安全保障省(DHS)は昨年6月、議会の承認抜きで、国民の意見も聞かないまま、出国するアメリカ人を対象とする顔認証システムを導入。格安航空会社ジェットブルーやデルタ航空も顔認証で搭乗できる新たなプログラムをスタートした。こうしたシステムは、実はDHSによる「生体認証出国」を意味している。
DHSはデルタ航空と連携し、アトランタ発とニューヨーク発の国際便の一部で搭乗ゲートでの顔認証を義務付けた。搭乗ゲートに設置された端末で顔をスキャンし、国務省のデータベースに保管された乗客リストの写真と照合。市民権や出入国状況もチェックする。
ボストンではジェットブルーと連携して南カリブ海のアルバ島行きの便で任意の顔認証チェックインを実施。乗客は航空券の代わりに実際に自分の顔をスキャンして搭乗手続きができる。
細かい違いはあるが、これらのシステムには共通点が2つある。1つは生体認証出国を全米展開する準備になること。もう1つはアメリカ市民権を持つ人間も対象になることだ。
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誤認や差別のリスクも
アメリカ人を対象にすべきかどうかDHSが国民に問うたことはない。そもそも議会はDHSにそんな許可を与えていない。議会は生体認証出国法案を少なくとも9回可決しているが、そのたびに対象は外国籍の人間だと明確にしてきた。
ドナルド・トランプ大統領が1月に出入国管理に関する大統領令を出した際には、アメリカ市民権を持つ人間は対象外だと明示するため発令し直したほどだ。