北朝鮮のICBM、アメリカの対北抑止施策揺るがす=川上・拓大教授
7月7日、拓殖大学海外事情研究所の川上高司所長は、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射したことを受けて米国は北朝鮮と関連の深い企業の資金の差し押さえなど圧力強化に動いているものの、軍事力の行使は困難になったと指摘する。写真は北朝鮮が発射したとされるICBM。朝鮮中央通信(KCNA)提供(2017年 ロイターKCNA/via REUTERS)
北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射し、朝鮮半島問題の行方が不透明さを増してきた。米国は北朝鮮と関連の深い企業の資金の差し押さえなど圧力強化に動くものの、拓殖大学海外事情研究所の川上高司所長は、軍事力の行使は困難になったと指摘する。
「米国の拡大抑止は破れつつある」、「米国は北朝鮮を核保有国と認めざるをえない」と指摘する川上教授に話を聞いた。
――米国は国連安保理の緊急会合で、軍事力行使の可能性に言及した。
「米国が北朝鮮に武力行使をすれば、北朝鮮から米国本土にミサイルが飛んでくる可能性が出てきた。米国まで届く核ミサイルが、まだ開発段階であれば攻撃可能だが、今や保有しているのか、保有していないのか分からない段階に入った。6回目の核実験があれば緊張は一気に高まろうが、軍事力の行使は難しいだろう」
――米国が武力行使できないとなると、日本など同盟国への拡大抑止が揺らぎかねない。
「北朝鮮が米国本土の一部に届くミサイルを持ったことで、米国に対する北の最小限抑止が効き始めた。あと何百キロか伸びれば、シアトルやロサンゼルスに届く。もう時間の問題だ。日本が北朝鮮に攻撃されても、主要都市へ報復される可能性が少しでもあれば、米国は反撃をためらうだろう。米国の拡大抑止は破れつつある」
――米国が取りうる手は。
「まず中国に制裁を科しながら、北朝鮮と交渉をやらせる。その結果、中国と取引をしながら北朝鮮の核保有を認めることになるだろう。その後、北朝鮮との間で対話に向かうのではないか。日本にとっては隣国に核保有国がもう一つ誕生する最悪のシナリオだ」
――日本の安全保障環境が一変する。
「日本は力のバランスを保つため、米国に何かしら拡大抑止の手段を要求をするしかない。旧ソ連の核ミサイルに対し、NATO(北大西洋条約機構)のイタリアやベルギーがやったように、米国の核を共有(ニュークリア・シェアリング)するのは選択肢の1つ。非核三原則の1つを取り払い、米国に核持ち込みを要求するという選択肢もある」