北朝鮮問題をめぐって、G20米中露日韓の温度差
独ハンブルクで開催されたG20首脳会議 Carlos Barria-REUTERS
習近平を褒め殺していたトランプが「中国の努力」に疑念を持ち始め、習近平はプーチンと足並みを揃えている。日米韓首脳会談はあっても、文在寅は北との対話を放棄していない。G20における各国の思惑を考察する。
中露は「双暫停」を要求
中国の習近平国家主席はドイツ、ハンブルグでのG20首脳会議に参加する前に、7月4日、モスクワでロシアのプーチン大統領と会談を行なった。会談後、共同声明を出し、北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことについては国連安全保障理事会の決議に違反するものであり受け入れられないと非難しながらも、中国が主張してきた「双暫停(そうざんてい)」を実行することを米朝に要求した。
「双暫停」とは「北朝鮮は核・ミサイル開発を暫定的に停止(凍結)し、米韓は合同軍事演習を暫定的に停止して、対話のテーブルに着く」というものである。「米朝双方が暫定的に軍事行動を停止する」という意味から来ている言葉だ。
この「双暫停」案は、4月6日と7日にアメリカで米中首脳会談が開催される前に中国側が提案していたもので、首脳会談後の「米中蜜月」期間においては前面には出していなかった。その期間は、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版である「環球時報」が5月4日に「中朝友好互助条約――中国は堅持していくべきなか?」という社説を載せたことからも分かるように、かなりアメリカに歩み寄った形を取っていた。
中朝友好互助条約は第二項に「参戦条項」があることから、「中朝軍事条約」と呼ぶことが多い。つまり「いざとなったら、中朝軍事同盟を破棄してもいいんだぞ」という逼迫したところまで来ていたのである。
そこに変化が起き始めたのは、5月14日の朝、北朝鮮がミサイルを発射したからだ。
習近平にとっても最高の晴れの舞台となる、初めての一帯一路国際協力フォーラムサミットが北京で開催される初日を選んで、習近平の顔に思い切り泥を塗った。その詳細は5月14日付の本コラム「習近平の顔に泥!――北朝鮮ミサイル、どの国への挑戦なのか?」で詳述したので、ここではくり返さないが、もっと大きな分岐点は米韓首脳会談だった。
米韓首脳会談で文在寅大統領は米国に屈服
6月30日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領はワシントンでトランプ大統領と会談を行なった。その前日の29日午後、米財務省は突然、中国の遼寧省にある丹東銀行を「マネーロンダリングの疑いがある」としてアメリカとの取引を禁じるという制裁に出た。丹東銀行など小さな地方銀行なので、中国自身にとっては大きな影響はない。