最新記事

テクノロジー

ゲーセンがVR(バーチャルリアリティー)で華麗に復活

2017年6月28日(水)10時15分
ゴゴ・リッズ

テレビゲーム同様、VRゲームも悪酔いしやすい。原因は稚拙なアニメーションや画面の更新の遅さ、動きと映像の不一致、回路の不具合などといわれる。

方向感覚を失ったり、頭痛や胃のむかつきを感じる人も多い。走行中の車内で本を読んだときの感覚に似ている。

殺し屋が復讐に燃えるアクション映画『ジョン・ウィック』を基にした1人用シューティングゲームを10分やったら、汗だくになり(ジョイスティックを動かすだけでなく、ハードな全身運動だった)、少しふらついた。ちなみに、数年前にドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のVR映像を視聴した後は嘔吐しそうになった。

ストックホルムを拠点とするスターブリーズ・ステュディオズが作成したスターVRは、オキュラス・リフトやプレイステーションVRよりはるかに低価格だ。同社のVR部門グローバル担当部長のブルックス・ブラウンは、映画『アバター』のデジタルチーム出身。ルーカスフィルムでは『レゴ スター・ウォーズ/フォースの覚醒』などのウェブゲームを手掛けた。

最新作『オーバーキルズ・ザ・ウォーキング・デッド』は、ゾンビに支配された世界を描いたドラマが原作だ。バーチャル世界でゾンビに襲われると、ゲームの最中に実際に誰かに肩をつかまれたかのように感じる。「絶えず叫び声が上がっている」と、ブラウンは言う。

MAGT170627-VR02.jpg

ヘッドセットの中で異次元の「現実」が繰り広げられる(アイマックスVRエクスペリエンスセンター) IMAX VR

幻想と現実のはざまで

アイマックスVRエクスペリエンスセンターには、開業から3カ月で1万5000人以上が来場した。ゲームは1回最長10分、料金は最大10ドル。今後はカリフォルニアやニューヨーク、イギリス、上海などに5000以上のVRアーケードを設置する計画だ。

中国はVRアーケードが盛況で、既に大小合わせて数千の施設がある。全米でも次々に誕生している。ミネソタ州の巨大ショッピングエリア「モール・オブ・アメリカ」では、インドの起業家グループが総工費1200万ドルの施設をオープンした。ブルックリンのVRバーは、3Dペインティングやジョブ・シミュレーターが人気だ。

VRはゲームのためだけの空間ではない。映画館や美術館でも人気の仕掛けになっている。

【参考記事】イーロン・マスク「火星移住は生きている間に可能だと知ってほしい」

5月中旬までワシントンのハーシュホーン博物館で開催されていた草間彌生の回顧展『ヤヨイ・クサマ インフィニティ・ミラーズ』は、代表作『無限の鏡の間』6作品のうち3つをVRでも体験できた。鏡で囲まれた部屋の中で、水玉とLEDライトと彫刻が無限に広がるような錯覚を生み出すインスタレーション作品は、VRでの再現にうってつけだった。

デジタルが織り成す夢の世界は、幻想から現実になりつつある。ただし、84年の小説『ニューロマンサー』でサイバースペースの概念を提唱したSF作家のウィリアム・ギブスンは、発展途上のVR技術の潜在的な危険に警鐘を鳴らす。

「アメリカのテレビがコカインさながらの強烈な中毒性を持っていたように、破滅的なテクノロジーになるかもしれない」

[2017年6月27日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB総裁ら、緩やかな利下げに前向き 「トランプ関

ビジネス

中国、保険会社に株式投資拡大を指示へ 株価支援策

ビジネス

不確実性高いがユーロ圏インフレは目標収束へ=スペイ

ビジネス

スイス中銀、必要ならマイナス金利や為替介入の用意=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 3
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピー・ジョー」が居眠りか...動画で検証
  • 4
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 7
    大統領令とは何か? 覆されることはあるのか、何で…
  • 8
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 9
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 10
    世界第3位の経済大国...「前年比0.2%減」マイナス経…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中