ゲーセンがVR(バーチャルリアリティー)で華麗に復活
テレビゲーム同様、VRゲームも悪酔いしやすい。原因は稚拙なアニメーションや画面の更新の遅さ、動きと映像の不一致、回路の不具合などといわれる。
方向感覚を失ったり、頭痛や胃のむかつきを感じる人も多い。走行中の車内で本を読んだときの感覚に似ている。
殺し屋が復讐に燃えるアクション映画『ジョン・ウィック』を基にした1人用シューティングゲームを10分やったら、汗だくになり(ジョイスティックを動かすだけでなく、ハードな全身運動だった)、少しふらついた。ちなみに、数年前にドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のVR映像を視聴した後は嘔吐しそうになった。
ストックホルムを拠点とするスターブリーズ・ステュディオズが作成したスターVRは、オキュラス・リフトやプレイステーションVRよりはるかに低価格だ。同社のVR部門グローバル担当部長のブルックス・ブラウンは、映画『アバター』のデジタルチーム出身。ルーカスフィルムでは『レゴ スター・ウォーズ/フォースの覚醒』などのウェブゲームを手掛けた。
最新作『オーバーキルズ・ザ・ウォーキング・デッド』は、ゾンビに支配された世界を描いたドラマが原作だ。バーチャル世界でゾンビに襲われると、ゲームの最中に実際に誰かに肩をつかまれたかのように感じる。「絶えず叫び声が上がっている」と、ブラウンは言う。
幻想と現実のはざまで
アイマックスVRエクスペリエンスセンターには、開業から3カ月で1万5000人以上が来場した。ゲームは1回最長10分、料金は最大10ドル。今後はカリフォルニアやニューヨーク、イギリス、上海などに5000以上のVRアーケードを設置する計画だ。
中国はVRアーケードが盛況で、既に大小合わせて数千の施設がある。全米でも次々に誕生している。ミネソタ州の巨大ショッピングエリア「モール・オブ・アメリカ」では、インドの起業家グループが総工費1200万ドルの施設をオープンした。ブルックリンのVRバーは、3Dペインティングやジョブ・シミュレーターが人気だ。
VRはゲームのためだけの空間ではない。映画館や美術館でも人気の仕掛けになっている。
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5月中旬までワシントンのハーシュホーン博物館で開催されていた草間彌生の回顧展『ヤヨイ・クサマ インフィニティ・ミラーズ』は、代表作『無限の鏡の間』6作品のうち3つをVRでも体験できた。鏡で囲まれた部屋の中で、水玉とLEDライトと彫刻が無限に広がるような錯覚を生み出すインスタレーション作品は、VRでの再現にうってつけだった。
デジタルが織り成す夢の世界は、幻想から現実になりつつある。ただし、84年の小説『ニューロマンサー』でサイバースペースの概念を提唱したSF作家のウィリアム・ギブスンは、発展途上のVR技術の潜在的な危険に警鐘を鳴らす。
「アメリカのテレビがコカインさながらの強烈な中毒性を持っていたように、破滅的なテクノロジーになるかもしれない」
[2017年6月27日号掲載]