最新記事

中韓関係

韓国を飲み込んだ中国--THAAD追加配備中断

2017年6月8日(木)20時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

一方、韓国民はその中国からの経済制裁の方を怖がって、中国ににじり寄るのである。中国の中央テレビ局CCTVでは、連日のようにTHAAD配備に抗議する韓国民衆の映像を流して、「中国が韓国民のために反対してあげている」という正当性を訴えている。

ならば、韓国は軍事的に中国に頼るのかと言ったら、そうもいかない。

経済的には中国に頼り、軍事的にはアメリカに頼る。

このTHAADの二基温存、二期中断という決定は、まさに韓国の追い詰められたジレンマの象徴だろう。

おまけに6月1日、ロシアのサンクトペテルブルクで開催された国際経済フォーラムで、ロシアのプーチン大統領は、「韓国に米軍のTHAADを配備することは絶対に許されないことだ」として、北方四島における軍事基地設置の正当性を主張した。2016年11月22日、ロシア太平洋艦隊の機関紙『ヴォエバヤ・ヴァーフタ』は、千島列島の択捉島で最新鋭の地対艦ミサイル「バスチョン」が実戦配備に就いており、国後島にも同じく新型の地対艦ミサイル「バール」が移送されてきたと明らかにしている。

プーチン大統領は「ロシアはアメリカの軍事行動を座視することはない」として、中露で韓国に圧力をかけていく構えを見せたばかりだ。

中国のネットには「中露の重圧のもと韓国大統領ひれ伏す。遂にTHAAD中断を宣告」という種類の情報が溢れている。

だからと言って、北朝鮮の脅威が取り除かれたわけでは、もちろんない。

北朝鮮が暴走したときに一番困るのは中国だ。

なぜ、中国は秋の党大会までは身動きできないのか。なぜ、党大会がそこまで重要なのか?

本当は一党支配体制崩壊におびえている中国

それは一党支配体制を遂行しているからであり、一党支配体制が崩壊するのを怖がっているからである。

そのために激しい言論弾圧をしながら、何も見えなくなるほどまでに突っ走っている。

何を隠そうとして言論弾圧をしているかと言えば、「中国共産党がいかにして強大化したか」に関する建国の根本に関する真相を隠蔽しようとしているためだ。

1989年6月4日、その死が天安門事件の引き金となった開明派の指導者だった胡耀邦は、1979年2月に「もし中国人民がわれわれ中国共産党の歴史の真相を知ったならば、人民は必ず立ち上がりわれわれの政府を転覆させるだろう」というスピーチをしている。

その「歴史の真相」とは拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』に書いた事実だ。

韓国のような状況になる可能性は日本にはないが、しかし中国に飲まれれば何が待っているかは想像することが出来よう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中