トランプが特別検察官ムラーを恐れる理由
米紙ワシントン・ポストは、捜査官たちが「トランプの側近を金融犯罪の疑いで捜査している」と報じた。米紙ニューヨーク・タイムズも次のように書いた。「元政府高官によれば、ムラーの捜査チームはマネーロンダリング(資金清浄)の疑いでトランプの側近らを捜査している。ロシア高官に協力した金銭的見返りは、支払いの形跡を隠すため、オフショア金融センター経由で受け取った疑いがある」
マネーロンダリングと言われて筆者が思い出すのは、トランプ陣営の選対本部長だったポール・マナフォートに関する米NBCニュースの報道だ。それによれば、マナフォートは「2007年以降キプロス島に少なくとも銀行口座を10口座、法人を10社保有」しており「そのうち少なくとも1社は、プーチンに近い大富豪から数百万ドルを受け取るのに利用された」という。
もしムラーの捜査対象が、ポール・マナフォートやマイケル・フリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)、大統領選で外交政策顧問を務めたカーター・ペイジなど、トランプの元側近たちの金銭授受に限定されるならトランプは幸運だ。トランプにとって辛いのは、娘婿でホワイトハウスの最側近であるジャレッド・クシュナー大統領上級顧問が容疑者になることだ。クシュナーは、米財務省の制裁対象になっているロシア開発対外経済銀行のセルゲイ・ゴルコフ頭取と会っていたことで取り調べを受けている。ゴルコフは元情報部員でプーチンの側近だ。
知られたくないマネートレイル
最悪なのは、捜査がトランプの怪しげな商売や会計処理にも及ぶことだ。米紙USAトゥデイは今年3月、「トランプと彼の会社は、少なくとも10人の旧ソビエト出身のビジネスマンと結びついていた。犯罪組織やマネーロンダリングに関与した疑いのある面々だ」と報じた。
トランプと側近たちは、そうした証拠の隠蔽を図っているようだ。最近のUSAトゥデイのスクープ記事が、「トランプ大統領が米大統領選で共和党候補に選ばれて以降、彼の会社が扱う不動産の大部分がペーパーカンパニーに売却されており、購入者の身元ははっきりしない」と報じたからだ。
さらにロイターは、「ロシアのパスポートまたは住所を持つ少なくとも63人が、フロリダ州南部にあるトランプのブランドを冠した豪華タワーマンションで、少なくとも9840万ドル相当の物件を購入した」と伝えた。トランプの息子エリック・トランプは、ロシアの投資家たちがトランプのゴルフコースに投資していると2014年に自慢していたという噂もある。