台湾からパナマをかすめ取った中国、寝返ったパナマ
中国にとって、貿易取引を餌に、台湾の友好国を味方に誘い込むことは簡単だろう。とはいえ、いくつかの国が台湾との関係を維持するのを黙認するのも、中国の目的に適っている。台湾が一線を越えたときに、政治的な交渉の切り札として使えるからだ。
中国は、国際舞台における台湾の存在感を着実に切り崩し、国際機関や委員会への台湾の参加を妨げている。最近では、中国の圧力を受け、世界保健機関(WHO)が総会から台湾を締め出した。つまり、2009年から続いていた台湾のオブザーバー参加が認められなかったのだ。
パナマが台湾と縁を切り、中国と国交を結んだことは、台湾にとってはさらなる衝撃だ。パナマも含め、台湾と外交関係を結んできた国は、台湾の開発援助の受益国。開発援助を通じて、台湾は発展途上国の忠誠を中国と奪い合ってきた。だが、次第に中国に押されつつあり、国交のある国は1990年代の約30カ国から数を大幅に減ってしまった。
【参考記事】台湾ではもう「反中か親中か」は意味がない
中国はパナマ以前にも、西アフリカの小さな島国であるサントメ・プリンシペを自陣に引き入れている。このときは、蔡と大統領就任前のドナルド・トランプが電話会談したことに対する報復だった。
「外交の買収戦には参加しない」
アメリカ大統領または次期大統領が台湾のトップと公式に電話会談をしたのは、1979年以来初めてのことだった。アメリカは台湾と正式な国交を結んでいない。中国にすれば、この電話会談は米台の接近し過ぎと映った。
そして今、パナマが台湾を見捨てて出て行った。蔡は6月13日、パナマとの断交を発表する会見で、「我が国の国家安全保障チームは、この状況を前もって察知し、できる限りの努力をしてきた。この結果はきわめ遺憾だ」と述べた。
「我が国は外交上、味方となる国を失ったが、外交上の買収合戦には参加しないという我々の方針に変わりはない」
パナマの心変わりは、中米における台湾の他の友好国も中国にシフトしかねない危うい状況を示唆している。例えばニカラグアは今のところ台湾との外交関係を維持しているが、中国から多額の投資も受けている。
2013年には、中国の億万長者、王靖が、ニカラグアを貫く運河の建設に関して、400億ドル規模の契約を結んだ。全長270キロに及ぶこの運河は、深さも広さもパナマ運河を凌ぐ。ニカラグア国内の反対と官僚主義のおかげで進展はしていないが、それも時間の問題かもしれない。
(翻訳:ガリレオ)