台湾からパナマをかすめ取った中国、寝返ったパナマ
1年前、協力関係を確認したばかりだった台湾の蔡英文総統(左)とパナマのバレラ大統領(右) Carlos Jasso-REUTERS
<台湾と国交を結んでいる国は台湾の被援助国だ。パナマも例外ではなかったが>
パナマは6月13日、台湾との国交を断絶し、中国と国交を結んだことを明らかにした。その背景には、中国からの投資の拡大がある。だが、中国がパナマを味方に引き入れた真の動機は、おそらく政治的なものだろう。台湾に残された数少ない友好国のひとつを掠めとることで、独立に心を残す台湾総統を懲らしめようとしているのだ。
パナマのフアン・カルロス・バレラ大統領は13日に、台湾から中国への「乗り換え」を発表した。
一方、中国の王毅外相は記者会見で、両国は貿易、投資、観光で協力していくことになると語った。またパナマに対して、シルクロード経済圏構想「一帯一路」への参加を促した。一帯一路は、中国の習近平国家主席が提唱する曖昧だが広大な構想で、世界中で貿易協定やインフラ開発を行い、中国のソフトパワーを強化することを目的としている。
近年、中国政府が世界中で貿易協定を積極的に結んでいるのに伴い、中国によるパナマへの投資も大きく拡大している。特にターゲットになっているのがパナマ運河だ。パナマ運河は、太平洋と大西洋を結ぶ事実上唯一の海上貿易路だ。
2016年には、中国国営のランドブリッジ・グループ(嵐橋集団)が、パナマ最大の港であるマルガリータ島港の管理権を99年間にわたって租借するという契約に署名した。この港では、パナマ運河の大西洋側の物流が処理されている。中国の国営企業各社は、パナマ運河周辺の約1200ヘクタールに及ぶ土地の開発にも目を向けている。
残るはたった20カ国
これまでパナマとの正式な国交がなくても、中国の投資の妨げにはなっていなかったようだが、ビジネス上の結びつきの拡大が、パナマに対する中国の利害を深めたことはたしかだ。
だが、中国政府を突き動かしたのは、おそらく経済ではなく政治だろう。台湾の蔡英文総統にとって、外交上、味方となる国の喪失は大きな痛手となる。パナマとの断交で、台湾が外交関係を持つ国はバチカン市国を含めた20カ国にまで減ってしまった。
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中台関係は、蔡が総統に選出された2016年から緊張が続いている。2016年の総統選では、中国寄りの国民党が政権を失い、独立志向の強い民進党の蔡が勝利した。
中国政府は2016年6月、「1992年合意」を蔡が明確に認めなかったことを受け、台湾との公式な対話を中断した。1992年合意とは、「一つの中国」原則を中台間で確認したとされるものだ。
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