仏議会選に向けて右旋回を目指すマクロンの試練
社会党色の払拭がカギ
マクロンから独立した選考委員会が左右両陣営、さらには新人と経験者のバランスを見計らいつつ候補者の選定を進めた。マクロンは候補者の半数を既成政治に染まらない新人にするよう要請。元女性闘牛士のマリー・サラ、長髪の数学者セドリック・ビラニといったタレント候補もリストに含まれる。
選考委員会はリストから外したバルスにも配慮し、彼の出馬する選挙区には対立候補を立てないと発表した。
新党がフランス政界に新風を吹き込むのは確かだが、候補者選びをめぐるゴタゴタは政権を担える政党を即席でつくる危うさを印象付けた。
大統領選でマクロンと共闘した中道政党「民主運動」のフランソワ・バイル党首は、REMからの出馬を希望した自党のメンバーが候補者リストにわずかしか入っていないことに激怒した。さらにラグビークラブ・トゥーロンのムラド・ブジェラル会長をはじめ、立候補を希望していないのに勝手にリストに入れられた人もいた。
だが候補者選びは序の口で、マクロンの新党がクリアすべき最も重要な課題は中道右派の共和党支持者の票を取り付けることだ。共和党支持者の多くは大統領選ではマクロンに投票したが、議会選では共和党候補に入れる確率が高い。
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世論調査会社イプソスの調べでは、大統領選の第1回投票で共和党候補のフランソワ・フィヨンに投票した人の48%が、フィヨン敗退後の決選投票ではマクロンに投票した。しかし彼らの多くは思想的には右派で、マクロンの新党の左派色を警戒している。
元共和党の選挙参謀で、2月にマクロン陣営に加わったジェローム・グランデスノンによると、REMがバルスの公認を見送ったのは右派の票を重視したからだ。マクロンがオランド政権の経済相だったこと、大統領選の序盤では社会党の支持をバネに有力候補にのし上がったこともあって、マクロンの新党は社会党の影響が強いとみられがちだ。議会選で勝つにはそのイメージを払拭する必要がある。
「マクロンにとって最も危険なのは、新党が新しい左翼政党とみられることだ」と、グランデスノンは言う。
既成政治と一線を画すアウトサイダーとして大統領選に勝利したマクロン。就任後の数週間で政権運営につまずけば、彼の改革に対する国民の期待は急速にしぼむだろう。
「決められない政治」で改革のチャンスをつぶし、再選を断念したオランドは「やり残したことが山ほどある」と言って、マクロンにバトンを渡した。
オランドの無念を晴らせるか。まずは議会選が正念場になる。
[2017年6月 6日号掲載]