最新記事

テロ組織

【動画】ISIS発祥の地ヌーリ・モスク最後の日

2017年6月23日(金)16時25分
ジャック・ムーア

今年1月時点のアル・ハドバ・ミナレット Alaa Al-Marjani-REUTERS

<国家樹立宣言をした場所を自ら爆破したISISは敗北を認めたのか。それとも、モスルに捕われた住民の「人間の盾」と自爆テロで反転攻勢に出るつもりか>

テロ組織ISIS(自称イスラム国)のイラク北部モスル支配の象徴となっていた「ヌーリ・モスク」と「アル・ハドバ・ミナレット(尖塔)」が崩壊した。ヌーリ・モスクは12世紀に建てられたイラクの貨幣にも登場する文化財で、2014年7月に最高指導者のアブバクル・バグダディ容疑者がカリフ制国家(ISIS)の樹立を宣言した場所だ。

bdy02.jpg

2014年にヌーリ・モスクでスピーチするバグダディとされる人物 Social Media Website via REUTERS

アメリカ主導の有志連合は、ヌーリ・モスクは21日にISISの手によって破壊されたことを発表した。イラクも同意し、「爆破はISISが敗北を認めたのに等しい」とした。

ISISは米軍の空爆で破壊されたと声明を出したが、CNNがイラク軍から入手した夜間の映像記録からは、ヌーリ・モスクが内側から爆破されているように見える。爆発して黒煙と灰が市内を埋め尽くす前の一瞬に写っている斜めの塔がアル・ハドバ・ミナレットだ。

【参考記事】ISISの終わりが見えた

(21日、崩れ去るヌーリ・モスクとアル・ハドバ・ミナレット) (一夜明けたヌーリ・モスクとアル・ハドバ・ミナレットの破壊跡)


あと数日のうちには、イラク軍がISISからモスルを奪還するかもしれない。だが、モスルの旧市街には約10万人の市民が「人間の盾」としてISISに拘束されているとみられ、そこで激しい自爆攻撃を仕掛けてくる可能性もある。

【参考記事】ISIS「人間の盾」より恐ろしい?イラク軍によるモスル住民への報復

ISISはこれまでも、歴史的な建造物をいくつも破壊してきた。イスラム教が「偶像崇拝」を禁じていることから、神を祀る神殿などは許せないとして、考古学的に貴重な遺跡をいくつも破壊した。それが今回、ISISの「聖地」を自ら破壊しなければならなかったとすれば、皮肉だ。

イラク・ハトラ

YouTubeより


1985年、世界遺産に登録されたハトラは、2014年夏にISISに占拠され、翌年2月には完全に破壊された。

イラク・モスル博物館、モスル大学図書館

mosul-museun02.jpg

Thaier Al-Sudani/REUTERS

ISISのモスル掌握後、収蔵されていた歴史的価値のある書物が闇市場に売り払われた。2015年2月にモスルのシンボルでもあった図書館を爆破した。

シリア・パルミラのベル神殿

bell02.jpg

Gustau Nacarino/REUTERS

2015年8月に古代ローマ遺跡で「宝石」といわれる築2000年のベル神殿を粉々に破壊した。

【参考記事】フィリピンが東南アジアにおけるISISの拠点になる?
【参考記事】ISIS戦闘員を虐殺する「死の天使」


【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!

ご登録(無料)はこちらから=>>


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中