最新記事

イスラム過激派

ISIS指導者バグダディ、「カリフ」から逃亡人生への転落

2017年6月15日(木)08時40分

バグダディ容疑者の行方を確認するのは不可能だ。

バグダディ容疑者は電話を使用せず、側近2人との連絡には一握りの運び屋を使う。ハシミ氏によると、同容疑者は普通の乗用車か、農民が使う小型トラックのような車両でイラクとシリアの国境を挟んだ両側を移動する。同乗するのは、運転手とボディガード2人だけだという。

バグダディ容疑者に関する最後の公式報告は、イラク軍が2月13日に発表したものだ。同軍のF16戦闘機がシリアとの国境に近いイラク西部で、バグダディ容疑者が他の司令官らと会っていたと思われる家屋に空爆を実施したとしている。

IS戦闘員の数は現在、計8000人で、そのうち2000人はアラブ諸国や欧州、ロシアや中央アジア出身の外国人だと、アブ・ラジーフ氏は指摘。

「イラク・シリア両国で彼らと戦うべく配置された数万人の兵士に比べれば小さな数だが、失うものは何もない向こう見ずな戦闘員で構成され、市民に紛れ込み、仕掛け爆弾や地雷や爆発物を大量に使用する部隊はあなどれない」と同氏は語った。

米国政府はバグダディ容疑者を捕らえるため、特殊作戦部隊のほか中央情報局(CIA)や他の米情報機関で構成され、国家地理空間情報局(NGIA)のスパイ衛星を駆使した共同捜査本部を立ち上げている。

だがバグダディ容疑者の影響力を払拭(ふっしょく)するにはそれ以上の努力を要するとタラバニー氏は指摘。「彼は今なおISの指導者とみなされており、大勢が彼のために戦い続ける。それが急激に変わることはない」と述べた。

たとえ殺害されたり拘束されたりしても、「過激思想に取り組まなければ、彼とISの遺産はこれからも残る」と同氏は付け加えた。

(Michael Georgy記者、Maher Chmaytelli記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

[バグダッド/アルビル(イラク) 12日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岩屋外相、トランプ大統領の就任式出席へ ルビオ氏と

ワールド

アングル:米車突入事件、導入予定の車止めでも阻止で

ワールド

アングル:大干ばつから一転洪水リスク、アフリカの小

ワールド

米・ウクライナ首脳が電話会談、支援や対ロ制裁など協
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国の宇宙軍拡
特集:中国の宇宙軍拡
2025年1月14日号(1/ 7発売)

軍事・民間で宇宙覇権を狙う習近平政権。その静かな第一歩が南米チリから始まった

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 2
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」
  • 4
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 5
    「本物?」レディー・ガガ、楽曲ヒットでファンに感…
  • 6
    古代エジプト人の愛した「媚薬」の正体
  • 7
    古民家がレストラン・サウナに! 動き出した「沿線ま…
  • 8
    悲報:宇宙飛行士は老化が早い
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    カイリー・ジェンナーを、授賞式会場で「露骨に無視…
  • 1
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 2
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分からなくなったペットの姿にネット爆笑【2024年の衝撃記事 5選】
  • 3
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵の遺族を待つ運命とは? 手当を受け取るには「秘密保持」が絶対
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ロシア兵を「射殺」...相次ぐ北朝鮮兵の誤射 退却も…
  • 8
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 9
    装甲車がロシア兵を轢く決定的瞬間...戦場での衝撃映…
  • 10
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 3
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中