ISIS指導者バグダディ、「カリフ」から逃亡人生への転落
バグダディ容疑者の行方を確認するのは不可能だ。
バグダディ容疑者は電話を使用せず、側近2人との連絡には一握りの運び屋を使う。ハシミ氏によると、同容疑者は普通の乗用車か、農民が使う小型トラックのような車両でイラクとシリアの国境を挟んだ両側を移動する。同乗するのは、運転手とボディガード2人だけだという。
バグダディ容疑者に関する最後の公式報告は、イラク軍が2月13日に発表したものだ。同軍のF16戦闘機がシリアとの国境に近いイラク西部で、バグダディ容疑者が他の司令官らと会っていたと思われる家屋に空爆を実施したとしている。
IS戦闘員の数は現在、計8000人で、そのうち2000人はアラブ諸国や欧州、ロシアや中央アジア出身の外国人だと、アブ・ラジーフ氏は指摘。
「イラク・シリア両国で彼らと戦うべく配置された数万人の兵士に比べれば小さな数だが、失うものは何もない向こう見ずな戦闘員で構成され、市民に紛れ込み、仕掛け爆弾や地雷や爆発物を大量に使用する部隊はあなどれない」と同氏は語った。
米国政府はバグダディ容疑者を捕らえるため、特殊作戦部隊のほか中央情報局(CIA)や他の米情報機関で構成され、国家地理空間情報局(NGIA)のスパイ衛星を駆使した共同捜査本部を立ち上げている。
だがバグダディ容疑者の影響力を払拭(ふっしょく)するにはそれ以上の努力を要するとタラバニー氏は指摘。「彼は今なおISの指導者とみなされており、大勢が彼のために戦い続ける。それが急激に変わることはない」と述べた。
たとえ殺害されたり拘束されたりしても、「過激思想に取り組まなければ、彼とISの遺産はこれからも残る」と同氏は付け加えた。
(Michael Georgy記者、Maher Chmaytelli記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)