ISIS指導者バグダディ、「カリフ」から逃亡人生への転落
イブラヒム・サマッライとして生まれたバグダディ容疑者は46歳のイラク人。国際武装組織アルカイダの指導者だったウサマ・ビンラディン容疑者が殺害されてから2年後の2013年、アルカイダから脱退した。
バグダディ容疑者は信仰の厚い家族のなかで育ち、イラク首都バグダッドのイスラム大学(現イラク大学)で学んだ。米国主導のイラク戦争が勃発した2003年、サラフィー・ジハード主義の活動に参加。米国によって拘束されたが、軍事的ターゲットというよりも市民とみなされ、約1年後に釈放された。
バグダディ容疑者はシャイで控えめだとハシミ氏は話す。最近は、ドローンや不審者を見つけやすい人けのないイラクとシリアの国境地帯に潜んでいるとみられるという。
米国務省による対テロ報奨金プログラムはこれまで、ビンラディン容疑者やイラクのサダム・フセイン元大統領に対しても、バグダディ容疑者と同じ2500万ドルの報奨金をかけてきた。
フセイン元大統領の場合もビンラディン容疑者の場合も裏切り者は現れなかったが、報奨金は彼らの移動やコミュニケーションを困難にさせた。
「報奨金は不安と緊張を生み、彼(同容疑者)の動きと護衛の数を制限させる」と、イラク首都バグダッドに拠点を置く、過激派組織の専門家ファドヘル・アブ・ラジーフ氏は指摘。「彼は72時間以上、同じ場所にはいない」と同氏は述べた。
バグダディ容疑者は「自身の移動に神経質になっており、とても慎重だ」と語るのは、IS対策に直接関与する任務に就く前述のタラバニー氏だ。「彼の信頼の輪は一段と小さくなっている」
録音されたバグダディ容疑者のスピーチが最後に公開されたのは昨年11月初め、モスル奪還作戦開始から2週間後のことだ。スピーチのなかで、同容疑者は支持者に対し「不信心者」と戦い、「彼らの血を川のように流す」ことを求めた。
米国とイラクの当局者は、バグダディ容疑者がモスルとラッカでの戦闘において、最期まで戦い抜く支持者とともに作戦司令官らを後に残し、自身の生き残りをはかっているとみている。