ISIS指導者バグダディ、「カリフ」から逃亡人生への転落
6月12日、過激派組織「イスラム国」の指導者バグダディ容疑者は、自身の「カリフ国家」の主要2拠点を失う危機に直面している。写真は、モスルのモスクで初めて姿を見せた同容疑者とされる人物。インターネットに2014年7月投稿されたビデオ映像から(2017年 ロイター/Social Media Website via Reuters TV)
過激派組織「イスラム国(IS)」の指導者バグダディ容疑者は、自身の「カリフ国家」(預言者ムハンマドの後継者カリフが指導する国家)の主要2拠点を失う危機に直面している。
とはいえ、逃走中の同容疑者を拘束あるいは殺害するまでには、数年はかかるだろうと、当局者や専門家は指摘する。
ISが支配地域で「首都」と位置づける2都市、イラクのモスルとシリアのラッカは陥落間近とみられ、バグダディ容疑者は両都市にまたがる広大な砂漠地帯に身を潜めていると当局者は語る。
「最終的には、彼(バグダディ容疑者)は殺されるか拘束されるだろう。永久に隠れ続けることはできない」と語るのは、イラク北部のクルド人自治政府でテロ対策を指揮するラフール・タラバニー氏。
「だが、それでも(拘束あるいは殺害は)数年先のことだ」と同氏はロイターに語った。
バグダディ容疑者の主な懸念事項の1つは、米国が同容疑者に「裁き」を受けさせるため提供する報奨金2500万ドル(約27億5000万円)に魅せられた裏切り者を出さないようにすることだと、IS問題で中東各国の政府に助言するヒシャム・ハシミ氏は言う。
「公然と支配する土地もなく、彼はもはやカリフ国家の所有を主張できなくなった」と同氏。「逃亡中の身であり、支持者の数は支配地域を失うにつれ減少している」
イラク軍は、ISが2014年6月に支配した同国北部モスルの大半を奪還。バグダディ容疑者は同都市の支配後まもなくして、自身をカリフ、全イスラム教徒の指導者だと宣言した。
シリアでの首都と位置づけるラッカも、クルド人とアラブ人の合同部隊によって奪還作戦が進められている。
公開された最後のビデオ映像には、聖職者の黒いローブを身にまとったバグダディ容疑者が2014年、モスルにある中世に造られたモスクの説教壇からカリフ国家樹立を宣言している様子が映っている。