シリア東部はアサドとイランのものにすればいいーー米中央軍
軍司令部が本能的に自らの任務を限定したがるのは理解できる。だが米中央軍の司令官たちは、2003年のイラク戦争や2011年のリビア内戦の後、復興安定化計画を欠いたために起きた混乱をあまりによく知っている。
米中央軍は、2017年のシリアは当時のイラクやリビアとは違うと考えているようだ。米軍は対ISIS掃討作戦の地上戦の「パートナー」であるクルド人主体の反政府勢力「シリア民主軍(SDF)」を支援しているだけなので、内戦後のシリアを統治する責任はSDFにあるという考え方だ。
もしイスラム教スンニ派が大半を占めるシリア東部を統治するのが、クルド人やアラブ人の外国人部隊には無理というなら、アサド政権やイランがまとめて支配すればよい、という考えなのかもしれない。
反政府勢力と協力し、シリア東部に持続可能な非アサド政権を作ってテロの再燃を防ぎ和平協議を取り持つのは、「我々の仕事ではない」と、米中央軍は言っている。
米軍も地上戦を戦うべきだった
シリアでISISに対する勝利を確実なものにすることにいたっては、誰の仕事でもなさそうだ。ドナルド・トランプ米大統領はバラク・オバマ前大統領と同じく、アサド政権の本性を知っている。テロや過激主義の温床で、地域を不安定化し、遠いヨーロッパまで毒をもたらす。
だがトランプはオバマと同様に、米中央軍の導くまま、ISISとの戦いを米軍を含むプロの地上部隊ではなく、クルド人主体のSDFに任せきりにした。SDFはよほどの幸運に恵まれない限り、ラッカ奪還に大きな苦戦を強いられ、彼らがシリア東部の真の戦利品とみなす産油地デリゾールの獲得も困難と知ることになるだろう。
どちらにしろ米中央軍はISISが消え次第、撤退する。デリゾールがアサドとイランの手に落ちようとお構いなしだ。
もし対ISIS地上作戦で有志連合が最前線に立っていれば、ISISはとうの昔にシリア東部から消え、アサドに代わる統治が始まっていただろう。アメリカがSDFに依存して内戦を長引かせた結果、ISISの寿命は2年以上延びた。その間にISISは、トルコや西ヨーロッパで大規模なテロ攻撃を計画、実行した。
そして今度は、ISIS消滅後の空隙をイランとアサドが埋めるよう手を貸している。
イランがシリアで影響力を拡大するのはアメリカの国益に反する、というトランプ政権の見方は正しい。だが米中央軍が明かしたシリア政策は、イランとアサドがシリア東部を支配しても一向に構わないと言っている。SDFを攻撃せず、対ISIS掃討作戦で「協調」するという条件を満たしてさえいれば。