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トヨタも注目 半導体エヌビディアがAIの立役者になった理由

2017年6月2日(金)11時16分
東出拓己(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

平社員でも経営陣にレポートを届ける

エヌビディアにはこれを可能にする極めてフラットな情報共有手法が存在する。全社員が隔週で、業務レポートを1万人の全社員宛てにメールで送信する、というものだ。役職の位が低い社員のレポートであっても、フアン氏を含む経営陣のもとに直接届けられる。経営陣はそれらすべてに目を通しているという。

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深層学習の技術開発にシフトしたことが、今回発表したトヨタ自動車との提携につながった(記者撮影)

エヌビディアがAI、とりわけ深層学習の技術開発に注力するようになったのも、実はこの制度がきっかけだ。

「GPUが米国トップ大学のAI研究で使われているらしい」。複数の営業担当社員がこのようなレポートを共有すると、フアン氏の目に留まった。すぐさまフアン氏は、メールを全社員に送った。「Swarm deep learning(深層学習に群がれ)」。

深層学習に大きな商機を見出したフアン氏は、即座にエヌビディアの新たな中心事業と位置付け、経営資源を集中させた。それが今のエヌビディアの成功につながっている。

知的に誠実であれ――。技術が常に変化する中で、自社の戦略も絶えずチェックし、見直す必要がある。欠かせないのが、他者からの批判を受け入れる開かれた姿勢だ。「もし何かがうまくいっていなければ、われわれはすぐに変化し別のやり方に挑戦することができる」と、エヌビディアで国際営業を統括するジェイ・プーリ副社長も語る。

エヌビディア社内では、「失敗」も新たな挑戦に必要なものとして受け入れられる。プーリ氏によれば、フアンCEOも「君が失敗したプロジェクトにはかなりのカネを投資した。君をクビにするようなことだけはしたくない。その失敗から学んだことを生かしてほしい。だから別のプロジェクトを君に任せる」といった言葉を社員にかける。

「エヌビディア社内で責任のあるポジションにつく人間はしばしば、何かに挑戦して失敗したことのある人間だ」(プーリ氏)

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ジェンスン・フアンCEOの経営哲学が社内にどう浸透しているか。ジェイ・プーリ副社長が解説してくれた(記者撮影)

光速と自分を比較せよ――。仕事を早くこなせ、という意味ではない。エヌビディア社内における「光速」とは、光より速いものは存在しない、ということから「究極」を意味する。プーリ氏は「多くの企業が競合他社と自社を比較する。われわれは究極と自分たちを比較する」と話す。

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