イスラエル人からトランプに託す究極の「ディール」
ユダヤ教の聖地、エルサレムの「嘆きの壁」を訪ねたトランプ(5月22日) Jonathan Ernst-REUTERS
<もしトランプに中東和平を実現する気があるなら、歴代米大統領の失敗を繰り返さないための策を授けよう>
イスラエル国民はワシントンで相次ぐドタバタ劇に驚きつつ、ドナルド・トランプ米大統領のイスラエル訪問が一体この地に何をもたらすのか気にしてきた。だが徐々に、トランプは歴史的な偉業を達成するため、イスラエルとパレスチナの和平合意という「究極の取引(ディール)」を実現したがっているらしいということがわかった。
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もしその言葉通りなら、イスラエルはトランプの意欲を歓迎する。
だがトランプ政権は和平をなし得なかった歴代の米政権の失敗から学び、従来とは異なる姿勢で取り組む必要がある。
さらにトランプ政権は、現時点で包括的な和平合意に達するのはほぼ不可能だと認めることから始めるべきだ。もしトランプが和平プロセスを再定義して進展に寄与することができれば、最大限の賛辞を手にするだろうが、その可能性は低い。
トランプがイスラエルを訪問したのは、第3次中東戦争でイスラエルがエルサレムを占領・併合した日(「6日戦争」)から数えてあと2週間で50周年というタイミングだった。1967年6月、建国19年だったイスラエルは、エジプトとシリア、ヨルダンの連合軍との戦争に勝った。だが不運にも、その大勝利を境にイスラエルはヨルダン川西岸を占領し、パレスチナ人に対する実効支配を始めてしまった。今も270万人に上るパレスチナ人が、イスラエルの支配下で暮らす。
入植者はゼロから40万人に
1967年6月以前には、ヨルダン川西岸にユダヤ人は一人も住んでいなかった。それが今や40万人以上のユダヤ人が移り住み(東エルサレムを除く)、イスラエル政府が承認した130カ所の入植地と、イスラエル政府に無許可で建設された非合法のアウトポスト約100カ所の入植地で暮らしている。
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ヨルダン川西岸に居住するユダヤ人入植者が増え、パレスチナ人住民に対するユダヤ人の支配が一層強まるにつれて、双方の住民の間で衝突が拡大した。1987年と2000年にはパレスチナ人による「インティファーダ(イスラエルに対する民衆蜂起)」が勃発。過去2度とも、数年にわたる武力衝突で双方に多大な犠牲者を出した。
近年のイスラエルを標的にした暴力の連鎖やローンウルフ(一匹狼)型のテロ攻撃は、しばしば第3次インティファーダと呼ばれる。ちょうど先週の金曜も、パレスチナ人住民とイスラエルの治安部隊が衝突し、数十名の負傷者を出したばかりだ。
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現状を打開するためには、ユダヤ人とパレスチナ人が離れて暮らすことが絶対に必要だ。「2国家共存」の原理に則った和平でなければならない。