最新記事

アメリカ政治

トランプ政権のスタッフが転職先を探し始めた

2017年5月22日(月)18時43分
クリス・リオッタ

大統領専用機から降りてくるトランプの側近たち Kevin Lamarque-REUTERS

<これ以上トランプの下で働いては自分の経歴に回復不能の傷がつく。しかしトランプの場合、報復も怖い>

履歴書を更新する。転職の見通しについて陰で情報を交換する。「最近どうしてる? コーヒーでも飲みながら話そう」というお決まりのメールを出し始める。

まるで破産を申請したベンチャー企業の最後の日々のようだが、実はこれ、ドナルド・トランプ米大統領のホワイトハウス。先週水曜のワシントン・ポスト紙によると、批判の渦中にある政権のせいで自分の評価に永遠の傷がついてしまうのを恐れて、数人のスタッフと側近が転職を画策し始めたという。

【参考記事】ロシア疑惑の特別検察官任命、その意味とは

トランプの下で働くのはいったいどんなに大変だろうという囁きは、もう随分から聞こえていた。報道によれば、ここ数週間トランプは、自分のスタッフを怒鳴り散らすという。それも、大統領選中のトランプ陣営とロシアの関係や、トランプの数限りない失言、裁判所につぶされた大統領令などについて次々と記者から聞かれ、何とか話の辻褄を合せようとてんてこ舞いをさせられているときに。

政権に漂う死臭

トランプ弾劾の可能性が議会でも公然と話されるようになった今、トランプの日々のスケジュールや会議、ブリーフィングなどを管理し、つつがなく進行させてくれている人々は間もなくいなくなるかもしれない。このまま残れば、トランプにクビにされるか政権が空中分解するか、とにかく自分たちの経歴に生涯消えない汚点が残ってしまいかねない。

【参考記事】共和党はなぜトランプを見限らないのか

先週水曜には、民主党のアル・グリーン下院議員(テキサス州選)が連邦議員として初めて公にトランプの弾劾を要求した。「一部のホワイトハウス職員は、弾劾を自虐的なジョークにし始めた」と、ワシントン・ポストの記事は伝えた。「中級レベルの側近は、転職コンサルタントに連絡し、履歴書を送り始めた。そして少なくとも一人の上級スタッフは友人に、ホワイトハウスを辞めた後の求人にはどんなものがあるか問い合わせている」

トランプの支持率は就任来の最低を更新しているが、ホワイトハウスの信用が揺らいでいるのはトランプ以外の誰かのせいだ、とトランプは言う。水曜に米沿岸警備隊士官学校で演説したトランプは、自分を批判するメディアや民主党のほうこそ悪いとしてこう言った。「歴史上、これ以上ひどい扱い、あるいは不当な扱いを受けた政治家はほかにいない」

【参考記事】トランプのエルサレム訪問に恐れおののくイスラエル

本来ホワイトハウスは、米政界で出世しようと思う者にとってチャンスの宝庫だ。だが今転職先を探す職員たちにとっての問題は、トランプ政権から漂う腐臭をそそぎ、トランプの報復も招かずに鳥のようにきれいに飛び立つことができるかどうかだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中