年内完成が迫る中国と香港結ぶ橋 強まる本土支配の象徴か
同プロジェクトの香港側を監督する香港運輸局は、一段の遅れやコスト超過が見込まれるかどうかに関する質問に対し、明確に回答しなかったが、年内の完成には自信を示した。
香港、マカオ、本土の3者で最終的な調整が行われていると電子メールで答えた。
ぼやける境界
香港で緊張が高まった時期においても、中国本土と香港の当局者らは、橋の経済的重要性を強調し続けた。香港では2014年、中国政府が完全な民主化を認めず、自治の約束を反故にする本土の介入を懸念した、主に学生を中心とした大規模な抗議活動が起きた。
香港では、本土が包囲網を拡大するなか、この橋によって香港の独立したアイデンティティーが脅かされるとみる人たちもいる。
「香港と中国の境界をあいまいにしようとするある種のネットワークが見て取れる」と、民主派の弁護士Kwok Ka-ki氏は話す。
「これらインフラ計画が全て完成した今後10─15年で、香港は中国の単なる一部になっているだろう。明確な境界が分からなくなってしまうのだから」
また、何十億ドルも投じた本土と香港を結ぶ高速鉄道計画についても、本土の出入国管理施設を香港に設置することを巡り非難の声が上がっている。
返還時に約束された「1国2制度」の下で保たれている香港の自治性を揺るがすとの指摘も聞こえる。
「多くの香港市民が統合を嫌がるとは思わないが、私たちはそれが民主的に行われることを望んでいる」と、高速鉄道計画への反対デモを主導し、現在は議員となったエディ・チュウ氏は言う。
「過去10─15年に行われたあらゆる抗議デモの背景にある核となる考えは民主主義だ。経済発展や都市計画の方向性を市民がコントロールできるかどうかは、民主化運動の延長線上にある」
だが、グレーのつなぎ服に安全ヘルメットをかぶった前述のWei氏は橋による統合を「1橋3制度」だとして称賛する。
「橋は新しい象徴となりつつある」
(James Pomfret記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
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