中東の盟主サウジアラビアが始めたアジア重視策
内戦に直接介入しないまでも、武器輸出に力を入れ、「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」との戦いを強化する姿勢は、サウジの安全保障上の利益に合致する。2月にアメリカ政府がサウジのムハンマド・ビン・ナーイフ皇太子に、テロ対策の貢献者に与えるジョージ・テネット賞を授与したことでも分かるように、「テロ対策」は今も両国を結ぶ太くて強い絆だ。
一方、イランと深い関係のある中国との間では、安全保障面の協力は期待できない。それでも中国のドローンやハイテク機器の売り込み攻勢にはアメリカも神経をとがらせる。サウジはドローンの共同生産で中国航天科技集団公司と組むと発表。ビジョン2030の目標に向けて自国の防衛産業を強化し、両国のドローン産業を成長させることを見込んでいる。
サウジの経済改革計画の優先順位、地域的な貿易の相互依存関係の構築、そしてアメリカの政治の不安定さを思えば、サウジが今後もアジア諸国との関係を強めていくのは確かだ。
とはいえビジョン2030は政府の補助金や公共部門の在り方を見直し、芽生えたばかりの知識経済に高学歴の若者を組み入れようとする野心的な計画。成功させるには、諸外国からの投資と多角的な収入源を幅広く確保しなければならない。だからアメリカも無視できない。イランの脅威を共有し、テロ対策で協力しあって、外交関係を強化していくしかない。
オバマ前政権の「リバランス」は道半ばで頓挫したが、サウジ王家の権力基盤は盤石だ。アジア重視の政策も、じっくり腰を据えて進めるだろう。
[2017年4月18日号掲載]
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