トランプのロシア疑惑隠し?FBI長官の解任で揺らぐ捜査の独立
ある元情報員は、コミーの解任は司法省のローゼンスタイン副長官への権力の集中を意味する可能性があると言う。司法省長官のセッションズは、昨年2度にわたって駐米ロシア大使と会いながら黙っていたとして、ロシアの大統領選関与疑惑の捜査の監督からは身を引いている。この件ではローゼンスタインがトップなのだ。
同情報員は、ローゼンタールがコミー解任を求めるメモでいかにコミーを酷評しているかを見れば、司法省がいかにコミーを憎んでいたかがわかるという。私用メール問題でクリントンの刑事訴追を勧告しない考えだと公表したことにも、司法省は猛反対した。
大統領によるFBI長官の解任は、初めてのことではない。ビル・クリントン大統領は1993年、ウィリアム・セッションズFBI長官を倫理違反の疑いで解任した。
トランプはここ最近、コミーとの確執を隠そうともしなかった。コミーの行動は、「ヒラリー・クリントンにとって人生最良の出来事だった。数々の悪行を無罪放免にしてもらったのだから!」とツイートもしていた。
トランプがバラク・オバマ前大統領の命令で盗聴されていたと証拠もなく主張したとき、コミーは激怒していたと報道されている。情報関係者が一様に盗聴の事実を否定し、最終的にコミーが、トランプの不穏当な主張を裏づける証拠は何もないと議会で証言した。
【参考記事】「オバマが盗聴」というトランプのオルタナ・ファクトに振り回されるアメリカ政治
コミーにも、過去に失態がなかったわけではない。捜査員がクリントンの新たなメールを発見すると、その中身もろくに吟味せずに、大統領選のわずか11日前に捜査を再開すると公表した(投票日の直前に何も不正の証拠はなかったとして捜査終了)。有権者にはまるでクリントンが有罪だったかのような印象が残り、トランプ逆転のきっかけになった。クリントンもこれを敗因として挙げている。
【参考記事】メール問題、FBIはクリントンの足を引っ張ったのか?
ホワイトハウスのショーン・スパイサーは報道陣に、コミーは「少し前に解任を知らされた」と言った。そして「直ちに発効する」と。
衆人環視の中で
コミー解任の知らせにワシントンは驚いた。ホワイトハウスは、議会幹部にも決定の理由を知らせる気がないようだった。
上院民主党の重鎮、ディック・ダービン上院議員は、トランプとロシアの関係についてのFBIの捜査を妨害しようとするいかなる試みも「重大な憲法違反」の可能性があるとし、独立の委員会か調査官を任命するよう求めた(共和党の賛同者は少なかった)
だが、コミーの解任劇で、トランプ陣営とロシアの関与疑惑はいっそう強まるばかりだろう。
FBI職員の士気にも影響しそうだ。「頬にびんたを、腹にパンチを食らったような気分だ」と、元職員は言った。
FBI長官その人も、最後の瞬間に不意打ちを食らった。コミーはロサンゼルスでFBIの求人イベントで演説していた。その時、テレビでコミー解任のニュースが流れたというのだ。
これがトランプ=ロシア疑惑の真相解明にとって、暗いサインにならなければいいが。
(翻訳:ガリレオ)
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