最新記事

移民政策

オーストラリアの市民権取得難しく「堪能な英語力」必要に

2017年4月21日(金)17時30分
エミリー・タムキン

遠くなるオーストラリア暮らし Steven Saphore-REUTERS

アメリカのマイク・ペンス副大統領の訪問を今週末に控えたオーストラリアのマルコム・ターンブル首相は、移民制度の大幅な変更を発表した。

まず、オーストラリアの市民権を取得するために必要な居住期間を1年から4年に延長。試験では、新たに「堪能な英語力」が必要になるほか「オーストラリア的な価値観」を持っているかどうかを確認するため、子供を学校に行かせているか、就労はしているか、などの質問を追加する。

「単純な公民的な試験だけで良いのか。審査の厳格化は、この国の多文化主義と価値観を強化するためのものだ」と、ターンブルは言った。

ターンブルも、母方の祖父母はイングランドからの移民だ。

ターンブルはつい2日前にも、外国人労働者の就労ビザを厳格化すると発表したばかり。4年間就労した後は永住権の申請もできた現行制度を廃止して、代わりに「国益のために明白に、厳格に、固い決意で作られた」新制度を導入し、オーストラリア人の雇用を最優先する「自国第一主義」を目指す。

トランプ政権とは似たもの同士

オーストラリアの移民制度はもともと甘いものではない。南太平洋の島国ナウルなどの収容所に収容されたままになるケースもある。

【参考記事】オーストラリアの難民政策は「人道に対する罪」、ICCに告発
【参考記事】希望のない最小の島国ナウルの全人口をオーストラリアに移住させる計画はなぜ頓挫したか

近年はヨーロッパやアメリカでも反移民感情が高まりつつあり、オーストラリアも例外ではない。反移民を掲げるワンネーション党のような極右政党や、超保守的なオーストラリア保守党が人気を集めている。

アメリカのオバマ前政権は、移民を希望してオーストラリアにやってきた人々の一部をアメリカに引き受ける合意をしたが、トランプ大統領はターンブルとの初の電話会議で約束を反故にし、自らも移民規制を強化している。

ということは、ペンス副大統領もきっと新しい移民規制に賛同してくれることだろう。

【参考記事】トランプに電話を切られた豪首相の求心力弱まる

From Foreign Policy Magazine


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中