「一つの中国」原則で米中に圧殺される台湾
トランプにそのような思想的な戦略がどれほどあるのか、アジアの米同盟国も読み切れない。ひょっとしたら、ビジネスマンが得意とする交渉術だったのかもしれない。台湾をカードに、困難な対中折衝を有利に進めようとしているのではないか、と台湾は心配する。
トランプは国内で低迷する支持率を打開するかのように、中国への圧力を強めている。南シナ海における中国の覇権主義的行動、北朝鮮の核・ミサイル開発問題、為替操作や米中不均衡貿易の是正など、多くの懸案を解決しようとするかのようだ。
一方、中国では朝鮮戦争以来「鮮血で固められた北朝鮮との友情」は冷え切った。「金王朝の第3王子」だった金正恩(キム・ジョンウン)も国務委員長就任以来、忠臣ぶりを示さなくなっている。
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また15年9月に習主催の抗日戦争勝利70周年軍事パレードを参観するなど、朝貢国家のような蜜月関係を築いた韓国の朴槿恵(パク・クネ)前大統領も今や拘束の身。朝鮮半島の情勢は不透明感が増してきた。
中国経済も混沌とし、国有企業の改革は遅々として進んでいない。「世界は自由貿易の原則を守らなければならない」と、習はオバマ前米大統領をまねたかのような見栄えのいい演説を国際舞台で披露。だが経済の停滞で国内政治の舵取りも難しくなっている。
「台湾は中国の核心的利益だ」とする習のスローガンは、何よりも台湾の人々の利益と意思を否定している。トランプに自由主義陣営のリーダーの自覚が少しでもあるならば、台湾を中国に売り渡してはならない。
[2017年4月18日号掲載]