中国は米国に付くと北朝鮮を脅したか?――米朝戦争になった場合
さらに12日の電話会談の内容に関しても、トランプ大統領が習近平国家主席に、「あなたは北朝鮮に核や核兵器を持たせてはならない。空母カール・ビンソンが朝鮮半島に移動したのは、北朝鮮のさらなる行動を阻止するためだ。あなたが金正恩(キム・ジョンウン)に『米国は空母だけでなく、原子力潜水艦も持っている』ということを知らせるように」という主旨の話をしたことまで、「暴露」してしまっているのである。
中国側の動き
一方、中国側の動きを見れば、12日の電話会談と同時に、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版である「環球時報」が「北朝鮮は自国の安全保障のため、核・ミサイル開発を中止すべきだ」という社説を載せた。
さらに中国は今年いっぱい北朝鮮からの石炭輸入を中止しただけでなく、石油の輸出も減らす意向を示し、4月14日には、中国国際航空が北京発平壌行きの運航を一時停止すると決定したのである。北朝鮮の観光収入にも制裁を加えた形だ。
北朝鮮側の動き
北朝鮮の外務次官は14日、海外メディアの取材を受けて、「最高指導部が決心した時に核実験を行う」などの強硬的な発言をしている。
しかし一方では、4月11日に平壌(ピョンヤン)で開催された北朝鮮の最高人民会議では、19年ぶりに外交委員会を復活させている。
これはほかでもない、対話の準備を意味する。
結論――「いざとなれば中国は米側に付く」と、北朝鮮を脅したか?
以上のことから、12日の「習近平・トランプ」電話会談において、両者はある約束を交わしたものと筆者は推測する。
それは中国が北朝鮮に米中の親密さを見せつけ「もし北朝鮮が核・ミサイルで暴走し、米国が北朝鮮を武力攻撃したときには、中国はアメリカ側に付く」と北朝鮮を脅すと、トランプ大統領に約束したのではないか、ということだ。
中国がそのように行動する可能性が現実味を帯びるために、習近平国家主席はトランプ大統領に「私(習近平)と、いかに親密であるかを発信してほしい」と頼んだのではないかと思うのである。だからトランプ大統領はあんなに習主席に賛辞を送ったのではないか。こうすれば北朝鮮への脅しの現実性が増す。
少なくとも、 「米中の親密さを北朝鮮に見せつけて、米朝戦争が起きたら、きっと米中が連携するのではないかという恐怖を北朝鮮に与えよう」という約束事はしたにちがいない。そうでなければトランプ大統領が「習近平なら必ずうまくやってくれると信じる」などということを言うはずがない。二人の仲がいいことを見せつければいいのだから。
結果、中国としては世界に米中蜜月をアピールすることができ、「一粒で二度おいしい」。
この前提であるなら、朝鮮半島海域における米軍の軍事配置が緊迫感を増していればいるほど、中国には有利となる。