最新記事

北朝鮮

中国は米国に付くと北朝鮮を脅したか?――米朝戦争になった場合

2017年4月17日(月)11時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

さらに12日の電話会談の内容に関しても、トランプ大統領が習近平国家主席に、「あなたは北朝鮮に核や核兵器を持たせてはならない。空母カール・ビンソンが朝鮮半島に移動したのは、北朝鮮のさらなる行動を阻止するためだ。あなたが金正恩(キム・ジョンウン)に『米国は空母だけでなく、原子力潜水艦も持っている』ということを知らせるように」という主旨の話をしたことまで、「暴露」してしまっているのである。

中国側の動き

一方、中国側の動きを見れば、12日の電話会談と同時に、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版である「環球時報」が「北朝鮮は自国の安全保障のため、核・ミサイル開発を中止すべきだ」という社説を載せた。

さらに中国は今年いっぱい北朝鮮からの石炭輸入を中止しただけでなく、石油の輸出も減らす意向を示し、4月14日には、中国国際航空が北京発平壌行きの運航を一時停止すると決定したのである。北朝鮮の観光収入にも制裁を加えた形だ。

北朝鮮側の動き

北朝鮮の外務次官は14日、海外メディアの取材を受けて、「最高指導部が決心した時に核実験を行う」などの強硬的な発言をしている。

しかし一方では、4月11日に平壌(ピョンヤン)で開催された北朝鮮の最高人民会議では、19年ぶりに外交委員会を復活させている。

これはほかでもない、対話の準備を意味する。

結論――「いざとなれば中国は米側に付く」と、北朝鮮を脅したか?

以上のことから、12日の「習近平・トランプ」電話会談において、両者はある約束を交わしたものと筆者は推測する。

それは中国が北朝鮮に米中の親密さを見せつけ「もし北朝鮮が核・ミサイルで暴走し、米国が北朝鮮を武力攻撃したときには、中国はアメリカ側に付く」と北朝鮮を脅すと、トランプ大統領に約束したのではないか、ということだ。

中国がそのように行動する可能性が現実味を帯びるために、習近平国家主席はトランプ大統領に「私(習近平)と、いかに親密であるかを発信してほしい」と頼んだのではないかと思うのである。だからトランプ大統領はあんなに習主席に賛辞を送ったのではないか。こうすれば北朝鮮への脅しの現実性が増す。

少なくとも、 「米中の親密さを北朝鮮に見せつけて、米朝戦争が起きたら、きっと米中が連携するのではないかという恐怖を北朝鮮に与えよう」という約束事はしたにちがいない。そうでなければトランプ大統領が「習近平なら必ずうまくやってくれると信じる」などということを言うはずがない。二人の仲がいいことを見せつければいいのだから。

結果、中国としては世界に米中蜜月をアピールすることができ、「一粒で二度おいしい」。

この前提であるなら、朝鮮半島海域における米軍の軍事配置が緊迫感を増していればいるほど、中国には有利となる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、5月中旬にサウジ訪問を計画 初外遊=関

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大

ワールド

米民主上院議員、トランプ氏に中国との通商関係など見
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中