モスル空爆で多数の民間人が殺された責任は誰にある?
一方、マーク・ミリー米陸軍参謀総長は3月末に、「こちらの進撃を遅らせるために、ISISが建物を自分たちで爆破し、その責めを有志連合に負わせた可能性が十分にある」との見解を表明している。
イラク軍も、ISISが建物に爆発物を仕掛けたため多くの死傷者が出たという有志連合の説明を支持している。
異なる報告もある。例えばロイター通信は複数の証言を基に、空爆で直撃を受けた建物が倒壊し、数十人の民間人が瓦礫の下敷きになったもようだと報じている。
OHCHRのルパート・コルビル報道官は、ISISが民間人の生命を尊重せず「人間の盾」として利用していると述べ、「そうした罠に引っ掛からないよう」、有志連合に警戒を促した。
【参考記事】対テロ軍事作戦に積極的なトランプが抱える血のリスク
だが実戦経験の豊富な軍隊(パレスチナ急進派の組織ハマスが実効支配するガザ地区を攻撃するイスラエル軍、シリアを空爆するロシア軍など)の例を見ても明らかなように、人口の密集した都市部を狙う軍事作戦を実行する限り、民間人の犠牲を防ぐことはできない。
ISIS「壊滅」を公約に掲げるトランプ米大統領は、戦闘員の家族を攻撃対象にする可能性を示唆したこともあり、空爆対象に関する制限の緩和に向けて動いている。とにかくISISを葬り去りたい一心のトランプが、国連や人権団体からの助言に耳を貸す可能性は低い。
[2017年4月11日号掲載]