中国の「用意周到な」THAAD報復 韓国政府、打つ手無し
いかなる対抗手段も、対中輸出の3分の1以上を占める最大の輸出品である半導体やディスプレーに影響を及ぼしかねない。
だが、そのような輸出を制限することによって、最も利益をもたらすセクターの1つをあえてリスクにさらすようないかなる法的手段も、韓国にとって現実的ではないと、NH投資証券のアナリスト、Piao Ren-Jin氏は指摘する。
「韓国政府は懸念を表明し続け、WTOに提訴することはできるが、国家レベルではそこまでだろう」と同氏は語る。最悪のシナリオでは、韓国経済の規模を0.25%低下させる可能性があるという。
代わりに、政府はマーケットの多様化といった対抗手段を講じることを企業にアドバイスしている。
そうした措置を検討している一企業に、Le Belle Cosmeticsがある。中国人観光客が減少したせいで、ソウル中心部にある免税店の売り上げは「急停止」していると、同社のキャシー・リム最高経営責任者(CEO)は話す。
「中国ばかりを見ていられない」と同CEOは述べ、市場拡大の選択肢としてベトナムのような新興市場を強調した。ただその一方で、「同時に、中国に代わるような市場はない」とも明かした。
韓国産業研究院のシニアリサーチフェローであるLee Hang-Koo氏は、中国で直面する困難の影響を最小限にとどめるため、政府が市場の多様化を企業に勧めることは「ばかげており無責任」との見方を示した。
「中国はあまりに大き過ぎる」と同氏は語り、証拠の欠如を考えるとWTOへの提訴は実現困難であり、提訴しても何年もかかる可能性があると指摘。「外交ルートを通じて話し合った方がいい」と述べた。
いかなる提訴も、韓国にとって最大の顧客である中国との関係を悪化させるだけかもしれない。韓国国際貿易協会(KITA)のデータによると、韓国の対中輸出は、今世紀の変わり目には同国の輸出全体の10%程度だったが、昨年は約4分の1を占めた。
韓国のシンクタンク、現代研究所によると、中国の対韓輸出は同期間、4.5%程度で推移している。