デビッド・ボウイが愛したネットという実験場
07年3月には親友で写真家のジェフ・マコーマックの本を引き合いに、ジョン・レノンとしたいたずらを明かしている。
「ジェフ・マコーマックが新著『フロム・ステーション・トゥ・ステーション』で、私とレノン、ポール・サイモン(アート・ガーファンクルだったかもしれない)と、あと2人ほどのロックフォークミュージシャンが集まったときのことを暴露している。ラジオ局に電話をかけまくり、ジョンが『どうも、こちらJL。DBやPSなんかと一緒にいる』と言うんだ。そして電話を切られるまで相手の反応を笑っていた」
ボウイはファンの音楽談義にも目を通していたようだ。あるファンが、ボウイの「ゴールデン・イヤーズ」(75年)について、マリリン・マンソンのカバーのほうが好きだとコメントしたときは、「あり得ない!」と投稿した。
ファンとのライブQ&Aに参加したこともある。00年10月のQ&Aの一部をご紹介しよう。
<ファン> 人肉を食べるって本当ですか。
<ボウイ> それってすごくプライベートな質問だよ。秘密にしておこう! きみはカトリックじゃないのかい?
<ファン> デーブ、カジノでギャンブルをすることはある?
<ボウイ> ないね。ルーレットを回すより、自分でとんぼ返りをしてるよ。ところでデーブって呼ぶのはやめてくれ!
<ファン> ジョージ・クリントンが曲の中で、あなたの名前を間違って発音したことに怒っている?
<ボウイ> 全然。私も彼について曲を書いたら、間違って発音してやるさ。でも、大統領について曲を書きたい奴なんていないだろう?
<ファン> 故人も含めて、一緒に仕事をしたかったのにできなかった人はいる?
<ボウイ> 死者と仕事をするのは大好きだ。何でも言うとおりにしてくれるし、反論しないし、歌は私のほうが絶対上手だからね。でもレコードジャケットでは、彼らのほうがすごくかっこよく撮れてたりする。
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こうしたやりとりを読むと、ボウイがファンとの交流を心から楽しんでいたこと、そして新しい音楽の在り方を常に探っていたことが分かる。それは現代のアーティストが、ツイッターなどのソーシャルメディアを通じて、ファンと直接交流するスタイルの原型のようにも見える(もちろんほとんどのスターは、ファンの書き込みに答えることはめったにないけれど)。
ボウイは晩年、ボウイネットにコメントを書かなくなった。ソーシャルメディアは決してやらなかった。06〜07年のボウイネットへの投稿は、今もファンサイトで見ることができるが、06年より前の投稿は失われてしまったようだ。
だがファンの間では、ボウイが残したものは脈々と生き続けている。彼らにとってボウイは永遠の「スターマン」であり、「痩せた青白き公爵」であり、「ネットで世界をからかった最初の男」なのだ。
[2017年3月 7日号掲載]