最新記事

テロ

ISISが中国にテロ予告

2017年3月3日(金)16時00分
ジャック・ムーア

2014年、爆破事件があった新疆ウイグル自治区のウルムチ駅で。中国警察の特殊部隊と住民 Petar Kujundzic-REUTERS

<ISISの脅威が中国へ。少数民族として弾圧され不満を抱いた新疆ウイグル自治区のイスラム教徒がテロ予備軍として狙われた>

中国でテロを起こし、あたりを「血の海にする」と脅す動画を、テロ組織ISIS(自称イスラム国)が公開した。ISISが中国をターゲットにするのは初めて。

ISISが中国を狙うのは、中国西部、新疆ウイグル自治区の少数民族、ウイグル族(トルコ系イスラム教徒)を弾圧してきたから。月曜に公開された30分間の動画には、イラクで訓練を受ける中国出身のウイグル族戦闘員らが映っていた。

中国にはウイグル族によるイスラム教徒の分離・独立運動があり、国家安全保障に対する重大な脅威として中国当局は警戒を強めてきた。

イスラムテロ組織を監視する米団体「SITEインテリジェンスグループ」の翻訳によると、動画の中である戦闘員は「虐げられた人々が流した涙に報いるため、神の意志により、川のようにお前たちの血を流してやる」と言っている。別の戦闘員は「邪悪な中国共産主義者は、反イスラムの追従者だ」と非難した。戦闘員らが礼拝や演説を行う場面もあった。

迫害を逃れて

ISISが中国への攻撃を予告したのも、ウイグル族がISISへの忠誠を誓ったのも今回が初めて。ただしISISは2015年11月に中国人の人質ファン・ジンフイ(50)を殺害し、中国外務省も後に事実関係を認めた。米ワシントンのシンクタンク「ニューアメリカ財団」は昨年7月、戦闘員としてISISに参加する目的で、少なくとも114人のウイグル族がイラクやシリアに渡航したと報告した。

【参考記事】中国を捨てて、いざ「イスラム国」へ

2015年12月には中国で不満を持つイスラム教徒に向けて戦闘員の勧誘を行ったこともある。米紙ニューヨーク・タイムズによると、ISISはイスラム教の宗教音楽ナシードやチャントを北京語で録音して投稿。「目を覚ませ」「武器を取って戦え」と訴えた。

新疆ウイグル自治区を「東トルキスタン」と呼ぶ分離・独立派のウイグル族は、中国政府による迫害、信教の自由の抑圧、雇用や教育や居住に関する差別に不満を抱く。長い髭やイスラム教徒の被り物を禁止し、断食月であるラマダンを妨害するなどの弾圧もある。

【参考記事】ウイグル人なら射殺も辞さない中国に噛み付くトルコ

報復でウイグル族が漢族を襲うこともあり、新疆ウイグル自治区では近年、暴動で多数が死亡している。

【参考記事】衝突の火元は漢族を襲った経済危機

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日製副会長、4月1日に米商務長官と面会=報道

ワールド

米国務長官、4月2─4日にブリュッセル訪問 NAT

ワールド

トランプ氏「フーシ派攻撃継続」、航行の脅威でなくな

ワールド

日中韓、米関税への共同対応で合意 中国国営メディア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中