ブレグジットの不安は「わび・さび」が解消? 2017年流行語の声も
日本国語大辞典では、侘びを「簡素の中にある落ち着いたさびしい感じ」と、寂は「古びて枯れたあじわいのあること」や「閑寂な趣のあること」などと説明している。
「わび・さびはたわ言」
しかしテレグラフは、「わび・さびなんてたわ言」だと主張する声を掲載した。著者のマイケル・ホーガン氏は記事の中で、わび・さびの信奉者がジェシカ・アルバさんやブラック・アイド・ピーズのラッパー、ウィル・アイ・アムさん、そしてジャック・ドーシー氏と「簡素な生活」とは無縁そうな金持ちばかりであることを指摘。「既存の哲学を再び綺麗にパッケージして、21世紀が抱える問題の解毒剤として売り込んでいるだけ」と主張している。
さらに、「ヒュッゲの次に来るのはlagom(ラーゴム)じゃなかったのか?」と疑問を呈した。というのも、今年1月の時点で女性誌のエルやヴォーグなどがこぞって「ヒュッゲの次はラーゴム」と取り上げていたのだ。ラーゴムは「ちょうどいい」を意味するスウェーデン語だ。
ホーガン氏は、英国人はどうやらブレグジットのこの時期に、芝生がより青く見える外国の文化から、「いかに生きるか」の指針を見出そうとしているようだ、と指摘。ヒュッゲもラーゴムもわび・さびも、果ては数年前から英米で大流行している近藤麻理恵氏のお片付け術も、すべてもっと物を買わせようとしているだけの無駄なものだ、と一蹴している。
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わび・さびと失業手当の関係
デイリーメールとテレグラフの読者コメント欄には、ホーガン氏と同じく「金持ちが簡素な生活とか言っても説得力ない」という意見が目立つ。「英国で侘び寂びに相当するものといえば失業手当」と言った声や、「デンマークでは外食が高価だから自宅で飲んで時間を過ごすヒュッゲという考えが生まれただけ。英国も最近は外飲みが高くつくからヒュッゲが流行ったというだけ」と言った指摘などもあった。
日本大百科全書には、わびは「貧粗・不足のなかに心の充足をみいだそうとする意識」とある。つまり「英国でわび・さびに相当するのは失業手当」という冗談も、あながち的外れな話ではないかもしれない。ブレグジット後の英国経済によっては、わび・さびを楽しむ心の余裕がもっと必要になる日が来るのだろうか。