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金正男暗殺の謎 北朝鮮、従来の「工作作戦」と異なる手口

2017年2月28日(火)10時33分

「現実的な職業とスキルを備えた要員を育て、家族とともに海外に送り出して生活させる」とジャン氏は言う。「今回の金正男氏の事件のように緊急の機会が生じた場合に、そういう海外在住の要員を作戦で利用することになるので、かなり前から配置されている」

マッデン氏は、北朝鮮工作員の一部は所属機関を定めないフリーエージェントで、必要に応じて利用されるという。

また、北朝鮮の元駐英公使テ・ヨンホ氏が今月ロイターに語ったところによれば、大規模な海外作戦に際しては、北朝鮮国家保衛省、いわゆる「保衛部」の職員が少なくとも1人は配置されるという。

この保衛部職員は北朝鮮当局と直接連絡を取っているのが普通で、保衛部だけでなく、朝鮮労働党中央委員会からの指令も受けているという。

マレーシア警察は22日、北朝鮮大使館の高官を殺人事件の容疑者として特定した。

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北朝鮮による暗殺事件を計画するのが朝鮮労働党だとすれば、実行に当たるのは、公式には軍に属する偵察総局である。

これまでにも北朝鮮の情報機関は、ときおり暴力的な海外作戦を実行してきた歴史を持っている。通常は韓国側の標的に対する攻撃だ。

1968年、当時の「偵察局」第124部隊に所属する特殊部隊員が、韓国の大統領府である青瓦台から数百メートル以内に侵入した。彼らには当時の朴正熙大統領を殺害するという指令が下されていた。

マッデン氏は、北朝鮮の情報機関には「50年の歴史があり、機関・作戦に関する膨大な蓄積がある」と語る。「こうした人々は、厳しく無情なスパイ組織のリーダーや作戦指揮官のもとで学んでいる」

現在の北朝鮮スパイたちは、「北朝鮮情報機関の創設者たちから見て第2世代、第3世代に当たる」と同氏は言う。

しかし、金正男氏暗殺の実行犯とされているベトナム国籍やインドネシア国籍の女性たちのような外国人の手先を利用することは、北朝鮮による作戦の常道からは外れている。

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