最新記事

アメリカ政治

トランプ政権のマクマスター新補佐官、安全保障に食い違い

2017年2月23日(木)09時59分

 2月20日、トランプ米大統領は、反対意見をほとんど受け付けようとしない。だが新たに国家安全保障問題担当の大統領補佐官に就任したマクマスター陸軍中将(写真)によって、早速度量が試されることになりそうだ。写真はフロリダ州のパームビーチで20日撮影(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)

トランプ米大統領は、反対意見をほとんど受け付けようとしない。だが新たに国家安全保障問題担当の大統領補佐官に就任したマクマスター陸軍中将によって、早速度量が試されることになりそうだ。

マクマスター氏はロシア、対テロ、米軍再編などの重要な安全保障上の問題について、ホワイトハウスにおいてトランプ氏に忠実なグループと見解が異なるだけでなく、トランプ氏自身が表明してきた考えとも一致していない。

感情より経験、政策理論より実践、衝動より知性に基づいた思考回路を持つマクマスター氏にとって、政治の舞台は異世界で、かつてのアフガニスタンやイラクの戦場と同じく反感を向けられていると受け止めるかもしれない。

ただ孤立無援ではないだろう。政権内のマティス国防長官や、ダンフォード統合参謀本部議長、上院軍事委員会のマケイン委員長らは、ともに軍務に携わった多くの将兵とともに味方になってくれると期待できる。

スパイサー米大統領報道官は21日、トランプ氏がマクマスター氏に「国家安全保障チームの組織陣容を望むように固められる完全な権限がある」と伝えた、と説明した。

だがトランプ氏は既に、右派イデオロギーの持ち主として知られるバノン首席戦略官を国家安全保障会議(NSC)メンバーに加える異例の人事を行っている。

元陸軍将校で国防総省の中東政策担当者を務め、マクマスター氏とは10年以上も友人関係にあるアンドルー・エグザム氏は「(マクマスター氏が)バノン氏が政権に引き入れた、非常にイデオロギー色の強い人物たちと衝突する恐れがある」と述べた。

それでもトランプ氏が入国制限問題などでつまずいたことは、マクマスター氏ばかりかマティス氏やティラーソン国務長官の立場を強める要素になった、とエグザム氏は話す。

マクマスター氏の影響力が最初に試されるのは、政権のシリア政策と対イスラム過激派政策の見直し作業になるだろう。国防総省高官は21日、見直し結果は来週早々に公表すると述べた。

バノン氏は昨年6月、米国と西側同盟国はイスラム過激派と「世界的に存亡をかけた戦争」を遂行していると発言。しかしマクマスター氏のイスラム教スンニ派過激組織を打倒するやり方はもっと慎重で、過激派と地元の大多数の住民を分離する戦略に依拠するものだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国経済、国際環境の変化への適応が必要=習主席

ワールド

独メルツ政権5月発足へ、社民党が連立承認 財務相に

ワールド

ウクライナ和平、米が望む急速な進展は困難=ロ大統領

ビジネス

台湾、25年成長率予想3.6% 第1四半期は5.3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中