英メイ首相トランプに擦り寄る 眉ひそめるEU
トランプ氏はメイ首相との会談の数時間後、イスラム圏7カ国出身者の入国を一時禁止する大統領令に署名した。EUの外交担当者らは、この決定は英国が直面するリスクを浮き彫りにするとみている。
トランプ大統領の決定を受け、英国でも抗議活動が起きた。その一方でジョンソン外相は、英国のパスポート所持者全員の米国入国が可能になるよう米政府から確約を取り付けようとし、EU外交官の怒りを買った。
ある西欧の上級外交官は「英国は米国と自分たちだけで何かを交渉しようとして、ありていに言って大した結果は得られなかった。非常に下品な行いだ」と怒りをあらわにした。
あるEU大使は「メイ首相は、交渉しようとしているのがどんな相手なのか分かってもいないのに、なぜワシントンへ急いで行く必要があったのか。トランプ氏への迎合は、欧州だけでなく英国内でも裏目に出ている」と述べた。
トランプ効果
メイ首相はトランプ大統領の立場に合わせるため、対中東・イラン政策を軌道修正している兆候があると、一部のEU幹部は見ている。
トランプ氏の大統領選勝利後の昨年12月。当時のケリー米国務長官は、入植問題でイスラエルの現政権を「最も右翼的」だと発言した。これに対し英首相報道官は、長らくテロの脅威に対応してきた国の入植問題だけを取り上げるのは、ユダヤ人とアラブの和平にとって最善ではないと批判した。
国連安全保障理事会で同月に行われたイスラエルのユダヤ人入植活動を非難する決議において、英国は賛成票を投じ、イスラエルのネタニヤフ首相を激怒させた。ただパリで年末に開催された中東和平に向けた国際会議では、紛争の当事者双方が欠席する中、共同宣言への支持を留保した。