最新記事

イギリス

英メイ首相トランプに擦り寄る 眉ひそめるEU

2017年2月2日(木)17時27分

2月1日、英国のメイ首相(写真右)はトランプ米大統領との関係強化を求めており、欧州連合(EU)加盟国の間では離脱交渉を前に懸念が強まっている。ワシントンで1月撮影(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)

英国のメイ首相はトランプ米大統領との関係強化を求めており、欧州連合(EU)加盟国の間では離脱交渉を前に懸念が強まっている。

メイ首相は米国で1月27日、海外首脳として初めてトランプ大統領と会談。EU離脱(ブレグジット)後も、米国との「特別な関係」を維持することが可能だという姿勢を打ち出した。

首相の訪問で英国はEU離脱後、貿易協定を結びたいとの思惑からイランやイスラエルへの態度を変え、トランプ大統領を喜ばせるのではないかとEU加盟国は懸念している。

あるEU幹部はロイターに対し「米国との自由貿易協定を結ぶため、外交政策を犠牲にして本当に良いのか。英国にただす必要がある」と話す。

メイ首相の報道官はロイターに、首相はトランプ大統領との交渉がEU加盟国の神経を不必要に逆なですると心配してはいないと説明。米国は主要同盟国だとの考えを改めて示した。

非常に下品な行い

EU離脱を決めた国民投票を端緒とする英政策の変化は、トランプ氏が大統領に就任してからの短期間で、英国やEUの計算に狂いが出てきたことを示している。

「メイ首相は米政府の勢いに驚いており、ブレグジット後の立場を選択するための迅速な行動が求められている」と欧州外交評議会(ECFR)のアルムート・メラー氏は話す。

同氏は「首相にとっての問題は、トランプ大統領が英国に団結を示すよう迫れば迫るほど、欧州大陸からはネガティブな反応が強く吹き出すということだ」と指摘。「ワシントンはEUの分断を招いている」とみている。

欧州議会の最大会派で中道右派の欧州人民党(EPP)の指導者、ドイツのマンフレート・ウエーバー議員は、現在の米英間の特別な関係を過去の例になぞらえ、「ルーズベルト大統領とチャーチル首相はともに、自由を求めて闘った。レーガン大統領とサッチャー首相はともに、共産主義の拡大を阻止した。トランプ大統領とメイ首相はそれぞれ、自国の国益のことしか考えていない」と指摘する。

EU首脳らは、EU離脱が完了するまで、すなわち現在のスケジュールで2019年初頭までは、英国が海外と二国間協定を結ぶのは不可能だとみている。

EU議長国を務めるマルタのムスカット首相は1月、「英国とは公正な取り決めを求めるが、この取り決めは加盟そのものに劣後するものでなくてはならない」とくぎを刺した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 2
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映像...嬉しそうな姿に感動する人が続出
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 7
    見逃さないで...犬があなたを愛している「11のサイン…
  • 8
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 7
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 8
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中