オバマ、記者団に別れ「まだ世界の終わりではない」
オバマはトランプの親イスラエル政策をやんわりと牽制。アメリカは長年にわたり中東和平の実現に向け仲介努力を行ってきたと語った。2つの国家の平和的な共存に合意するよう「当事者たちに強いることはできない」が、イスラエルとパレスチナが合意に至らなければ、「この問題は解決できない。イスラエルが民主的なユダヤ人国家であり続けようとするなら(パレスチナ人国家と共存するしかない)。もう1つの選択肢は何らかの形で入植地を拡大し、1つの国家を目指すことであり、そうなれば何百万もの人々を抑圧することになる」
トランプとトランプが駐イスラエル大使に選んだデービッド・フリードマンは、パレスチナ自治政府も将来の首都に望んでいるエルサレムに在イスラエルのアメリカ大使館を移転すると主張するなど、極端にイスラエル寄りの姿勢を打ち出している。オバマは「われわれの行動は非常に大きな影響や予期せぬ結果をもたらす」と次期政権に訴えた。「われわれの新しい大統領がこれまでの政策を検証し、練り直すのは正しいし、適切なことだと思うが、熟慮の上で決断してほしい」
移民、性的マイノリティーの権利、人種差別などについても、オバマは「われわれの核心的な価値」を守るよう次期政権と国民に訴えた。アメリカで育った不法移民の子供を強制送還することやマイノリティーに対する組織的な差別は、中心の価値観に反する行為だと、オバマは語り、人種差別や警察の強引な取締り、有権者登録の妨害といった問題と「取り組む必要がある」と力を込めた。
「幸運を祈る」
「(黒人差別の州法)ジム・クロウ法や奴隷制にまで時を逆行するような差別意識があり、参政権の制限を黙認するような風潮もある」と、オバマは訴えた。「これはアメリカが最善に機能する形ではない。誰もが投票できる制度を保証するため、この問題にもっと関心を寄せてほしい」
トランプ就任を前にアメリカの価値観を改めて強調したオバマだが、アメリカの未来を悲観しているわけではないとも語った。
会見の終り近くには、トランプが就任しても世界が終わるわけではないと言い、「世界の終わりと言えるのは、世界の終わりだけだ」と、記者たちの不安をなだめた。
質疑応答を終えると、オバマは記者団に感謝し、「幸運を祈る」と言って演壇を下りた。それは記者たちだけでなく、アメリカ全体に向けられた言葉のようだった。