保護主義的トランプ発言に日本の打つ手は? 政府内で対応策求める声も
米国内で生産する自動車や電機などの日本企業が増え、日本から直接、米国向けに輸出する量は、1980年代と比べて大幅に減少している。
しかし、中国を含めた新興国から完成品だけでなく、部品も含めて輸出しているケースが多く、ボーダータックスが設定された場合、かなりの打撃が日本企業に加わるリスクが存在する。
その政府関係者は「今後のトランプ氏の政策展開を見極める必要があるが、日本企業にとって、一時的な打撃もあり得る。深刻になりそうなら、経済対策の立案も視野に入れるべきだ」と話す。
保護主義懸念の円高リスク
もう1つのリスクは、トランプ政策の保護貿易的側面に光が当たり過ぎ、これまでのドル高/円安、株高のシナリオが一転、ドル安/円高、株安へと急変する展開だ。
先の政府関係者は、円高が急速に進んだ場合に「通貨当局のけん制発言(口先介入)や、場合によっては、日銀による追加緩和が必要になるかもしれない」と述べている。
日銀内では、米株の乱高下や円高を材料にした日本株の下落に対し、楽観的な見方が多い。トランプ相場の期待先行の面が浮き彫りになっているものの、トランプ氏が主張してきた減税やインフラ投資の実施は大きなブレがなく、成長重視の政策が展開されるとの見方が多い。
そのうえで、日銀が長期金利をゼロ%程度に固定する現行政策を堅持することによって、円安・物価上昇が進むと多くの幹部は想定している。
12日の会見で菅義偉官房長官は「日本企業は、米国のよき企業市民として認知されている」と強調した。
だが、20日の正式就任以降、どのような「トランプ砲」が発射されるのか、その「方向」次第では、日本政府内に再び、緊張感が張り詰める局面もありそうだ。
(梅川崇、中川泉 取材協力:竹本能文、伊藤純夫 編集:山口貴也、田巻一彦)