最新記事

日米関係

保護主義的トランプ発言に日本の打つ手は? 政府内で対応策求める声も

2017年1月13日(金)11時14分

 米国内で生産する自動車や電機などの日本企業が増え、日本から直接、米国向けに輸出する量は、1980年代と比べて大幅に減少している。

 しかし、中国を含めた新興国から完成品だけでなく、部品も含めて輸出しているケースが多く、ボーダータックスが設定された場合、かなりの打撃が日本企業に加わるリスクが存在する。

 その政府関係者は「今後のトランプ氏の政策展開を見極める必要があるが、日本企業にとって、一時的な打撃もあり得る。深刻になりそうなら、経済対策の立案も視野に入れるべきだ」と話す。

保護主義懸念の円高リスク

 もう1つのリスクは、トランプ政策の保護貿易的側面に光が当たり過ぎ、これまでのドル高/円安、株高のシナリオが一転、ドル安/円高、株安へと急変する展開だ。

 先の政府関係者は、円高が急速に進んだ場合に「通貨当局のけん制発言(口先介入)や、場合によっては、日銀による追加緩和が必要になるかもしれない」と述べている。

 日銀内では、米株の乱高下や円高を材料にした日本株の下落に対し、楽観的な見方が多い。トランプ相場の期待先行の面が浮き彫りになっているものの、トランプ氏が主張してきた減税やインフラ投資の実施は大きなブレがなく、成長重視の政策が展開されるとの見方が多い。

 そのうえで、日銀が長期金利をゼロ%程度に固定する現行政策を堅持することによって、円安・物価上昇が進むと多くの幹部は想定している。

 12日の会見で菅義偉官房長官は「日本企業は、米国のよき企業市民として認知されている」と強調した。

 だが、20日の正式就任以降、どのような「トランプ砲」が発射されるのか、その「方向」次第では、日本政府内に再び、緊張感が張り詰める局面もありそうだ。

 (梅川崇、中川泉 取材協力:竹本能文、伊藤純夫 編集:山口貴也、田巻一彦)

[東京 12日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドGDP、7─9月5.4%に鈍化 製造業と個人

ワールド

英運輸相が辞任、過去に有罪認める スターマー首相に

ワールド

トルコGDP、第3四半期2.1%に減速 高金利が重

ビジネス

ユーロ圏消費者物価指数、11月速報値は前年比+2.
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える新型ドローン・システム
  • 3
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合の被害規模は想像を絶する
  • 4
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 5
    バルト海の海底ケーブルは海底に下ろした錨を引きず…
  • 6
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 7
    ペットの犬がヒョウに襲われ...監視カメラが記録した…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    定説「赤身肉は心臓に悪い」は「誤解」、本当の悪者…
  • 10
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 4
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 9
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 10
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中