最新記事

アメリカ経済

米共和党はトランプ経済政策にNOと言えるか

2017年1月11日(水)21時16分
ペドロ・ニコラチ・ダ・コスタ

「トランプの財政支出に公共投資が含まれても、舞い上がらないことだ」と、米マサチューセッツ工科大学の教授でIMFの元チーフエコノミスト、サイモン・ジョンソンは指摘する。「公共事業は(議会上院の共和党トップ)ミッチ・マコネル院内総務にとって優先事項ではなさそうだ。下院の共和党議員にしても、公共投資を支持するには、社会保障費(低所得者向けの公的保険であるメディケイドや高齢者向けのメディケアなど)の削減が条件になる」。しかしトランプが削減をのめば、これらの制度はそのまま維持することを目玉の一つに掲げたトランプ自身の選挙公約に反することになる。

 リスクは他にもある。トランプは企業を名指しで脅すことで経営判断に介入し、次期大統領に選ばれてからも自分の会社の所有者や経営者から退くことに抵抗を示すなど、前例のない振る舞いを見せてきた。公共事業で大規模な不動産開発を行っても、トランプのビジネス仲間とグルと疑われたりして、国民の反発を買いかねない。

 一方、税制や規制については下院共和党とより意見が合いそうだ。トランプも下院共和党も、税率を下げ規制を緩和したいと思っている。問題は、金持ち減税が景気を刺激し、いずれは低所得層にも恩恵が及ぶという「トリクルダウン効果」が今や怪しくなっていることだ。現実には、金持ち優遇は高所得者への富の集中を加速しただけだった。法人税改革は超党派の支持を得ている。もし税制を簡素化して徴税を強化できるなら望ましいが、今のところ話はその方向には向かっていない。

 トランプがもたらす地政学的リスクも経済にはマイナスだ。トランプは、台湾を取引材料にして中国に貿易交渉を仕掛け、米中関係は極めて悪化している。市場は今のところ過剰な反応はしていないが、トランプが大統領に就任すればそうはいかないだろう。共和党がどこまでトランプを正道に戻せるかが問われている。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

自動車大手、トランプ氏にEV税控除維持と自動運転促

ビジネス

米アポロ、後継者巡り火花 トランプ人事でCEOも離

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦争を警告 米が緊張激化と非難

ビジネス

NY外為市場=ドル1年超ぶり高値、ビットコイン10
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中