メイ英首相が選んだ「EU単一市場」脱退──ハードブレグジットといういばらの道
さらに、メイはEU離脱手続きを定めたリスボン条約(EU基本条約)第50条を発動するとしているものの、そのための国内手続きは定かではない。イギリス最高裁は、メイにその権限があるか否かの判断をまだ出していないのだ。最終的には議会に決断がゆだねられることになるかもしれず、議会は離脱に対して異なる見方をする可能性がある。
とはいえ、いずれ影響は現れる。イギリスの大学を例に取ろう。メイは1月17日の演説で、イギリス国内の大学は世界的な競争力を維持できると主張したが、大学幹部たちは、メイが主張するハード・ブレグジット(単一市場へのアクセスを断念する離脱)は「悲惨な結果をもたらす」と主張する。実際、ヨーロッパからの入学申し込み者はすでに減っている。ただし、メイは内務大臣時代に、学生ビザの発給を規制し、留学生に対して卒業後すぐに国外退去するよう求めた人物だ。留学生の数が減ったとしても悲惨な結果だとは考えないかもしれない。
それでも、メイの方針がすべての人にとって暗いニュースだというわけではない。メイが演説で、離脱に関する最終決定は、事態をより冷静に見守る議会にゆだねると述べたことで、苦境に立たされていたイギリスポンドは急上昇し、2008年の世界金融危機以来、最大の上げ幅となった。投資家たちはどうやら、全世界を驚かせた昨夏の国民投票の結果を、議会が無効にしてくれる可能性があると思っているようだ。