米中、日中、人民元、習体制――2017年の中国4つの予測
「もし王が留任すれば、それは習近平体制の3期目にゴーサインが出たと理解するべきでしょう。2022年の党大会時点で習近平総書記の年齢は69歳。今の王氏と同じです」と水彩画氏。
日本への亡命状態にある中国人風刺漫画家の辣椒(ラージャオ)氏も「習近平は反汚職運動で多くの政敵を追い落としました。もしトップの地位を手放せば今度は自分が標的になるかもしれませんし、その時は死刑すらありうるかもしれません。その恐怖から権力の座を手放さないでしょう。長期政権を築くのは確実だと考えています」と指摘する。
毛沢東以来の権威を得たとされる習近平総書記が長期政権を築くのかどうか、今秋明らかになる。
(3)政府は難題「人民元流出」を止められるか
2012年秋の習近平体制発足後、中国経済は毎年のように大事件に見舞われてきた。2013年にはシャドーバンキング問題、2014年には過剰生産能力、2015年には株価急落、2016年には人民元流出......。毎年の難題をさばいてきた経済運営の手腕を讃えるべきか、モグラ叩きのように一つの問題を押さえ込んでも次の問題へとつながる中国経済の不安定さを懸念するべきなのかは悩ましい。
それでも経済成長率は高水準をキープし、2016年も6.5%の目標を達成している。今年も難題を抱えつつも、一定レベルの成長を実現するだろう。
さて、今年の難題はなんなのかが気になるところ。現時点では昨年から続く人民元流出が熱い。
中国の中央銀行である中国人民銀行が1月7日に発表した統計では、2016年末の外貨準備高は前年比3198億ドル減の3兆105億ドルと発表された。2015年も5126億ドルのマイナスだっただけに、2年累計で8000億ドルを超える大幅減となった。3兆ドルという大台割り込みも近い。
もう一つの大台が人民元レートだ。9日時点のレートは1ドル=6.9375元。2013年には1ドル=5元台が見えるところにまで迫ったが、その後は下落が続きもはや7元台突入が秒読みとなっている。
外貨準備の減少は中国当局による為替介入が要因だ。当局はさらに予想外の介入手段も持ち出している。
第一に香港のオフショア人民元市場への介入だ。5日のHIBOR(香港銀行間取引金利)は中国国有銀行による人民元供給がしぼられたために前日の16.9%から38.3%に急上昇。これに伴い元の対ドルレートも反騰した。元売りを続ける投機筋への牽制との見方が有力だ。
第二に中国国民に対する牽制球だ。3日、外国為替管理局が発表した通達は一般国民による「ありの引っ越し式外貨流出」を狙い撃ちする内容となった。
中国では外貨への交換はいまだに自由化されておらず、1人当たり年5万ドルまでという規定がある。通達は「不動産購入や金融商品購入を目的とした両替は認められていない。違反者はブラックリストに載せて以後の両替を禁止することもありうる」という内容。せっせとえさを運ぶありのように、ちまちまと個人で両替して資産防衛を図っていた一般国民の動きを封じようというわけだ。
ちなみに5日夜に電子通貨ビットコインの価格が急落したが、これは人民元反騰の影響を受けたもの。中国では資産防衛策としてビットコインを買う動きが広がっていたが、人民元の反騰を受け、ビットコインを売って人民元を買い戻そうとする動きが広がった。
現在、ビットコインの取引は90%が中国人によって占められているという。中国政府は貪欲に先端技術の取り込みを図っているため、ビットコインにはほとんど規制をかけていなかった。そのため手軽な外貨投資としてビットコインの人気が高まったというのだ。