最新記事

航空機

ナッツリターンの悪夢再び 大韓航空、機内暴力の男に翻弄される

2016年12月28日(水)15時25分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

 一方でかつてトラブルのあった男をそのまま乗せていた大韓航空も非難を受けている。当初は、6人の客室乗務員が全員女性だったこと、スタンガン(スタンガンの一種)を使おうとしたが近くに他の乗客がいたため使えず、ロープで拘束したことなどを説明し、事態の収拾を図ろうとしたが、世界的な厳しい批判を受けて、27日ジ・チャンフン社長自ら出席して機内安全の向上対策についての記者会見を行った。

(参考記事:イスラム教徒ユーチューバー、「挑発的行動」でデルタ航空が降ろす

 それによると、まず問題を起こしたイム・ボムジュンについては、今月29日と来月にも大韓航空の航空券を予約していたが、これについては搭乗拒否をすることとして、25日に通知したという。大韓航空が乗客に対して搭乗拒否を通知したのはこれが初めてだという。また今後、イムについて永久搭乗拒否にするかどうかも検討中だ。

newsweek_20161228_145746.jpg

大韓航空は27日、機内安全の向上対策を紹介した。客室乗組員が客室で暴れる者を囲みスタンガンで狙う訓練のようす。(c) 大韓航空

newsweek_20161228_145903.jpg

客室乗務員が機内で暴れる者を容易に制圧できる新型ロープ

 さらに、今後機内での暴動が発生したときに効率的に対応するため、現状10%しか配置されていない男性客室乗務員を増やしていくという。またスタンガンについて従来は「乗客や乗務員の生命又は身体に切迫した危険があるか、航空機の飛行の安全を維持することが危機に瀕した場合などの重大事にのみ使用することができる」という厳しい使用規定があったため、過去に機内に導入されてから3回しか利用されることがなかった。そのため規定を「暴れる人物に対し警告をして、それでも従わない場合はスタンガンを発射して気絶させる」と改めていくという。また拘束するためのロープについては、タイラップのようにひっぱるだけで締め付けられる新型のロープを披露、機内安全への取り組み強化を強調した。

 とはいえ、世界的なスターのリチャード・マークスが問題を指摘しなければ、うやむやのまま、軽微なトラブルとして処理されていた可能性も高い。2年前の"ナッツリターン"事件に続く今回のトラブルは、「大韓航空の安全不感症」として韓国メディアから強く批判されている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、英仏と部隊派遣協議 「1カ月以内に

ワールド

トランプ氏の相互関税、一部発動 全輸入品に一律10

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、2週連続減少=ベーカー

ワールド

台湾の安全保障トップが訪米、トランプ政権と会談のた
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中