人民元、関税、南シナ海──トランプの対中批判はどこまで正確か
中国がアメリカからの輸入品に「重税を課している」とするトランプの主張は、部分的には正しい。中国は基本税率17%の付加価値税(VAT)を導入しているが、この税率は大半のEU諸国よりも低い(例えばイタリアのVATは22%だ)。だが、アメリカはVATを導入していない。つまり、アメリカが中国や諸外国から輸入する製品に追加課税はかからない。
アメリカは一貫して反対
だが、ファクトチェックサイト「Politifact」によると、アメリカが中国製品に一切課税していないという点は、トランプの間違い。アメリカは、自国内で販売される中国製品に関税をかけているのだ。その税率は、農産物が2.5%、他の物品が2.9%。たしかに中国はアメリカよりも高い関税を課しており、アメリカ産農産物の税率は9.7%、非農産品は2.9%となっているものの、アメリカが中国製品に一切課税していないとは言えない。
■中国の南シナ海進出
主要な海上航路である南シナ海に中国が主張している領有権は、アメリカと周辺諸国にとって重大な懸念対象になっている。オバマ政権は一貫して中国の主張に異を唱え、これらの島々の領有権を主張するベトナムやフィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾に対し、中国に対抗するため結束するよう呼びかけ、米海軍艦船によるパトロールも実施している。
【参考記事】米爆撃機が中国の人工島上空を飛んだことの意味
だが、中国が南シナ海に「巨大な軍事複合施設」を建設しているとするトランプの主張に対しては反論が出ている。オンラインマガジン「The Diplomat」によると、中国が西沙諸島のウッディー島(永興島)に約1400名からなる部隊を配した軍用基地を築いているのはたしかだが、大規模な前哨基地の一部ではないという。しかしながら、トランプの言う「巨大な軍事複合施設」が将来、出現する可能性はある。The Diplomatによると中国は、同国が南沙諸島に持つ7つの人工島の軍事化を徐々に進めつつある。