最新記事

米中関係

人民元、関税、南シナ海──トランプの対中批判はどこまで正確か

2016年12月6日(火)16時46分
コナー・ギャフィー

 中国がアメリカからの輸入品に「重税を課している」とするトランプの主張は、部分的には正しい。中国は基本税率17%の付加価値税(VAT)を導入しているが、この税率は大半のEU諸国よりも低い(例えばイタリアのVATは22%だ)。だが、アメリカはVATを導入していない。つまり、アメリカが中国や諸外国から輸入する製品に追加課税はかからない。

アメリカは一貫して反対

 だが、ファクトチェックサイト「Politifact」によると、アメリカが中国製品に一切課税していないという点は、トランプの間違い。アメリカは、自国内で販売される中国製品に関税をかけているのだ。その税率は、農産物が2.5%、他の物品が2.9%。たしかに中国はアメリカよりも高い関税を課しており、アメリカ産農産物の税率は9.7%、非農産品は2.9%となっているものの、アメリカが中国製品に一切課税していないとは言えない。

■中国の南シナ海進出

 主要な海上航路である南シナ海に中国が主張している領有権は、アメリカと周辺諸国にとって重大な懸念対象になっている。オバマ政権は一貫して中国の主張に異を唱え、これらの島々の領有権を主張するベトナムやフィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾に対し、中国に対抗するため結束するよう呼びかけ、米海軍艦船によるパトロールも実施している。

【参考記事】米爆撃機が中国の人工島上空を飛んだことの意味

 だが、中国が南シナ海に「巨大な軍事複合施設」を建設しているとするトランプの主張に対しては反論が出ている。オンラインマガジン「The Diplomat」によると、中国が西沙諸島のウッディー島(永興島)に約1400名からなる部隊を配した軍用基地を築いているのはたしかだが、大規模な前哨基地の一部ではないという。しかしながら、トランプの言う「巨大な軍事複合施設」が将来、出現する可能性はある。The Diplomatによると中国は、同国が南沙諸島に持つ7つの人工島の軍事化を徐々に進めつつある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中