ネパールの被災地に巣くう人身売買ビジネス
仕事という餌につられて
ネパール警察とNGO(非政府組織)は封じ込めに躍起だ。検問所を増やしてバスを監視し、村々で啓発運動を実施している。警察によれば被災地からの人身売買の容疑者352人を逮捕したが、取り逃がす件数のほうが多いという。
人身売買業者がなかなか捕まらないのは、仕事を紹介してやるという約束を信じた被害者が進んで国境を越えるからだと、女性と子供に対する犯罪の捜査を担当するラム・クマル・カナル副監察官は言う。「被害者でさえ警察に届け出たがらず、逆に隠したがる。そして国境を越えてしまったら、われわれにとっては厄介だ。こちらの管轄ではなくなってしまう」
凶悪な犯罪はネパール国内でも起きている。9月、首都カトマンズの観光エリアでアメリカ人が逮捕された。児童養護施設から連れてこられた子供に性的虐待を加えた容疑だ。ネパール中央捜査局のナワ・ラージ・シルワル局長によれば、人身売買業者が子供の両親に金を渡し、カトマンズで仕事に就かせると約束したという。
「地震も人身売買を助長したと思う」とシルワルは言う。「被災地から多くの子供がカトマンズに連れてこられている」
【参考記事】地震に乗じてネパールに恩を売る中国
地元の活動家は、家族が一緒に暮らせるよう、ニワトリやヤギの飼育など小規模ビジネスを始めるための訓練と資金を提供している。人身売買と地震の被害が特に大きいシンドゥパルチョーク郡イチョクでは、地元のNGOパートナーシップ・ネパールが、極めて困窮している200世帯に起業資金350ドルを助成している。
貧困の拡大となくならない人身売買に苦戦を強いられていると、パートナーシップ・ネパールを運営するスニタ・ブカジュは言う。「女性と結婚しては、国外に送り出すことを繰り返している男性もいる」
見通しは暗い。ブカジュのNGOの資金はあと3カ月で底を突く。
「最悪だ」とブカジュは嘆く。「6年間ここで暮らし、働いているが、地震の後は人身売買が日に日に増えている。3カ月後に事務所を閉めることになれば、歯止めをかける者が誰もいなくなる」
From GlobalPost.com特約
[2016年12月 6日号掲載]